インターネットの普及、利用者の拡大につれて、インターネットにおける人権侵害や差別事件も続発している。インターネット上で発覚した部落差別事件の件数は、97年20件、98年20件、99年15件である。『全国のあいつぐ差別事件 1999年版』では、98年に発覚した事件の概要が紹介されているが、これらは、反差別ネットワーク人権研究会が、定期的に電子ネットをモニターし、内容の分析や収集をおこなっているもの。
最近の傾向として、差別者がグループ化している、本人に連絡しても無視されることが多い、また指摘をした人が誹謗の対象となる、一度閉鎖されても別なページを利用する,部落問題への事業者の認識不足や差別者が特定できないことで行政が十分対応できていない、などの問題がある。
今後の解決方策として、国際的な連携も含めた監視活動の強化や苦情処理機関の設置などによる実効的な解決システムの構築や、情報弱者に対する方策や電子ネット上でのプライバシー保護等の観点を盛り込んだマルチメディア人権保護法の制定など、具体的な法規制の可能性の検討が必要である。
すでに、事業者の自主規制として、社団法人テレコムサービス協会による「インターネット接続サービス等に係る事業者の対応に関するガイドライン」、電子ネットワーク協議会による「電子ネットワークにおける倫理綱領」「パソコン通信を利用する方へのルール&マナー集」が公開されているが、人権ガイドラインの制定など事業者を巻き込んだ取り組みが求められている。