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人権部会・学習会報告
1999年5月15日
「不正アクセス禁止法案」の内容と問題点

(報告)加藤敏幸(関西大学)

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 「不正アクセス禁止法案」が国会に提出されたのを受けて部会を行い、加藤さんからの報告の後、討議を行った。

 加藤さんは、インターネット上における不正アクセスの問題について取り組みを既に行っている諸外国の法整備状況やアメリカにおける州法の事例などを報告された後、この法律がもつ問題点が明確にされた。

幼稚な手口には対応可能であるが高度な手口には対応は不可能である。しかも、予備行為にのみ処罰を与えることで善意に問題点を指摘する行為までが処罰対象になりかねない。

防御努力義務が明確にされていないことから、ログ保存義務が要求される可能性がある。これは、個人情報保護の観点からも問題点があるが、個人情報保護法は改正されておらず、見送られたままである。

 こうした諸問題が報告者から指摘されたが、今回は残念ながら、この法律が与える他の人権侵害の視点と今後審議されていく規制・救済法との関連は時間の関係からも深い討議にいたらなかった。

この法律は同時に提出されている盗聴法により電話や電子メールなどの電子通信の傍受・盗聴捜査を合法化していることとともに、個人情報が保護されないという大きな問題を含んでいる。

 諸外国においては個人情報保護の整備があり、その上でこうした不正アクセスに対して法的な規制がかけられているのは、いわば個人情報を保護しかつ不正アクセスによる被害を救済するという「規制・救済」の観点が明確に位置付けられているのである。 しかし、今回の法にはそうした観点は見受けられない。

 今後は、この視点を重視した対案を建てるとともに規制・救済法の整備を求めていくことが重要であろう。

(田畑重志)