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人権部会・学習会報告
1998年5月20日
人権意識の現状と啓発教育の課題
−吹田市市民意識調査を中心に−

(報告)田中欣和(関西大学)

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今回は、吹田市民の「人権に関する市民意識調査」に基づいて、報告していただいた。この調査は、1996年12月に、吹田市に居住している16歳以上の市民を対象に、無作為抽出で3000人を対象に行われたものである。有効回収率は52.1%であった。 

現実にある人権問題をどの程度認識しているかを尋ねた項目において、「女性に対する差別の問題」、「在日韓国・朝鮮人に対する差別の問題」が「ある」と答えた人は、それぞれ、78.6%、73.9%であったのに対し、「部落差別の問題」については60.3%と、これまでかなり教育が行われてきた割には認識が低かった。

また、20年後にその問題がどうなっていると思うかという将来予測の項目では、「男らしさや女らしさより、人間らしさ、自分らしさが重視されるようになる」、「定住外国人(永住権を持っている人)も日本の選挙権を持つようになる」と答えた人が、それぞれ75.4%、72.3%であったのに対し、「同和地区住民に対する偏見や差別はなくなる」と答えた人は51.3%と、部落問題に関しては約半数の人しかなくなると思っていないという結果が出た。

 このことから、部落問題についてのこれまでの教育・啓発は、差別の実態は伝えても、それがなくせるんだという展望を持たせる部分が弱かったのではないかということが指摘された。

 また、「あなたの親類の子どもが、結婚したいと思っている相手が同和地区の人だからと反対されている場合、そのことで相談されたら」という項目では、「迷うことはない。自分の意志を貫いて結婚しなさいという」、「家族の強い反対があっても説得してあげるという」を選んだ人を「積極的態度」とし、「いろいろ苦労が多そうだから慎重に考えるようにという」、「家族の強い反対があればあきらめるようにという」を選んだ人を「消極的態度」として合計したところ、将来予測の項目で「同和地区住民に対する差別はなくなる」と答えた人の方が「積極的態度」をとる人が多いという結果が出た。

 このことからも、教育・啓発において、「差別はなくせるんだ」という認識が持てるような材料を提供していくことが大切であることが分かり、今後の教育・啓発の課題であるということが強調された。


 他に課題としては、かなり多くの人が攻撃型差別者ではないが、「自分は差別はおかしいと思っているが、世間はそうはいかないだろう」という同調型差別者であり、この層を「差別をなくすために行動する」層へと移行する機会をつくることが必要だということ等が挙げられた。

 その他、伝統的慣習に対して持っている意識と実際にとる行動との間にギャップが見られたことから、行動につながる知性が求められているということや、調査結果の世代によるちがい等について報告があった。

(事務局)