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次に、当研究所所長・友永より、「インターネットと部落差別」をテーマに報告がなされた(『ヒューマンライツ』1997年10月号参照)。
電子情報を使った主な部落差別事件を、発生年順に紹介した。
1) パケット通信をよる「部落地名総鑑事件」
- 1989年5月、「お子さまが結婚を控えている方へのBIGなPRESENT」として、大阪の被差別部落名と主な職業の一覧表が掲載されていた。
- また同年6月には、「各局必見!」として和歌山県の被差別部落のリストが記載されていた。
2) パソコン通信を使った「地名総鑑」に類する事件
- 大手商業ネット(パソコン通信管理業者)のBBS(掲示板)に「部落地名総鑑をお持ちのかたへお願い。営業関係の仕事をしているため、どの地域が『部落』であるかを調べています。以下の、地域の部落名を教えてください。」と書き込みがあった。
- その後、部落解放運動の関係者がこの書き込みに気づき、管理者に通報、削除に至った。この依頼をした男性は特定され、行政関係者や運動関係者からの働きかけがなされた。
- 他にも、京都府在住の方からも同じような書き込みがされた。その背景には、引っ越し先として同和地区を紹介されたため、子どもの小学校入学を控えて同和地区でないところに引っ越したいからだという。
- この事件の発見者は部落解放同盟員で、書き込み者及び管理者に抗議の電子メールを送ったが、本人は開き直り、管理者は反応なしであった。
- 事件を究明していく中で、100万人(当時)をこす会員を擁しながら、夜間の職員を配置していないという無責任な体制であることが判明した。
3)インターネットを使った差別事件
大阪府在住の「大和民族を守る会」を自称する男性によって、長大な差別文書がホームページに載せられていた。
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最後に電子情報を使った差別事件の増加をふまえ、今後の課題を提起した。
- 部落問題について積極的な情報を各方面に提供していくことが必要。
- 各種通信には民間の仲介機関が不可欠である。これらの機関による部落問題を始めとする人権問題の積極的な研修や啓発活動、さらには、規約や契約書などでの自主規制も必要。
- 繰り返し行われる悪質な差別宣伝、差別扇動に対しては、法的規制と被害者の効果的な救済が必要。
討論の中で、ドイツとアメリカの例を挙げ、法的規制・自主規制のメリット・デメリットを出し合った。
現在の日本では、発信者・業者の自主規制を促しながらも、その範囲を超えた悪質な事件に対しては、現行法を上手く適用しつつ対応して行かなければならないとの結論に至った。