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2004.12.13
部会・研究会活動 <人権部会>
 
人権部会・学習会報告
2004年11月10日
『全国のあいつぐ差別事件』2004年度版の紹介

松下 龍仁(部落解放・人権研究所)

(1)全国大量連続差別投書・ハガキ等事件

2003年5月から東京都内を中心に、確認されたハガキ等だけで約450件、被害者は100人にも及ぶ連続差別事件が発覚した。単に個人を誹謗・中傷するだけでなく、個人の自宅周辺への差別煽動や個人の名を騙った物品注文・電気やガスの契約解除、人権諸団体への誹謗・中傷の投書など時を追うごとに悪質さがエスカレートしている。その後の2004年10月、この犯人は逮捕されている。

(2)差別投書・落書き・電話

各地で連続した差別落書きが多発している。報告されている分だけでも京都、奈良、東京、高知、香川、大阪、和歌山、徳島と非常に多い。

(3)地域社会での差別事件

高知、埼玉、和歌山では病院や老人ホームでの差別発言が報告されている。

(4)就職差別事件

大阪で、企業内公正採用選考人権啓発推進員による差別面接事件が発覚した。神奈川、東京、石川、富山などでも統一応募用紙違反事例や早期選考、採用選考時の不適切質問が多く報告されている。

(5)企業・職場での差別事件

福岡で営業職員が契約者の引越しに際して、また、広島では自動車事故の処理についての会話中での差別発言が報告されている。愛知では会社社長が社員に差別発言を行っている。

(6)公務員による差別事件

和歌山市職員が自分の娘の結婚相手について和歌山市役所や和歌山県庁などで執拗な身元調査をしていたことが発覚している。

(7)結婚差別事件

1999年、大阪府警警部補による戸籍謄本不正入手事件に絡んだ結婚差別について、「釣書」という差別慣習と学歴差別、親戚が被差別部落の「近く」に住んでいたというだけで差別された厳しい部落差別の現実等、さまざまな人権侵害の状況が判明してきた。

(8)教育現場における差別事件

特徴として、中学校や高校で生徒による差別発言事件が多発している。

(9)マスコミ・出版界での差別事件

テレビ番組の歌詞字幕での差別表記、古地図での差別表記、それぞれの事件が報告されている。

(10)インターネットによる差別事件

前年度版での報告と比べて事件数が増加しており、地名総鑑的な掲示板の存在が多くみられた。インターネット利用者が急増している。ここ最近の流れをみると、インターネットにおける差別事件等について、単にインターネット利用に関わる特定の問題とするのではなく、現実の社会での重大な問題として取り組まれる必要がある。

(参考文献:『全国のあいつぐ差別事件 2004年度版』部落解放・人権政策確立要求中央実行委員会編・発行、解放出版社、A5判、155頁、定価1400円(税別))