本人通知制度[事前登録制]導入への経緯
2005年に発覚した行政書士による戸籍謄本等の不正入手事件について人権侵害につながる重大な問題と認識して、真相究明、問題解決の取り組みを進めてきた。具体的には、国への要望や対策本部の設置、住民票等交付請求書の情報開示等に関する研究会の設置等であり、そこから今回報告する本人通知制度[事前登録制]に取り組むこととなった。
本人通知制度[事前登録制]導入の趣旨
導入の趣旨のひとつは、通知を希望する被交付請求者(事前登録者)に戸籍謄本等の交付請求の事実を知らせることにより、当該請求が不正であった場合、その早期発見につながり、個人情報の不正利用防止や事実関係の究明が可能になることである。
ふたつめは、本人通知制度の導入により、不正請求の発覚可能性が高まることから、不正請求を抑止する効果への期待である。
本人通知制度[事前登録制]の概要
本人通知制度[事前登録制]の対象者は、事前に本人通知について登録申請のあった個人になり、除籍謄本を含んだ戸籍謄抄本、戸籍の附票、除票を含んだ住民票の写しが通知される対象書類になる。また、対象とする交付請求の種別としては、代理人請求と特定事務受任者からの請求を含んだ第三者請求であり、証明される情報としては、交付日、交付種別(住民票等)、請求種別(代理人請求、第三者請求)、交付枚数であるが、この他、各市町村の個人情報保護条例により開示できる情報も含まれることになる。
なお、通知方法や証明書の交付、手数料については、①証明書交付の際に手数料を徴収する、②証明書交付後に手数料を徴収する、③証明書交付に係る手数料を徴収しない、の3つのパターンが当面考えられるが、どの手法を選択するかは各市町村の判断に委ねられる。
本人通知制度[事前登録制]にかかる今後の大阪府の役割と取り組み方針① 市町村に対して
まず第1に、市町村の本人通知制度[事前登録制]設計および要綱作成について、必要な助言や資料の提示などきめ細やかに対応していく。
第2には、市町村の個人情報保護審議会での審議に際しての全国市町村の個人情報保護審議会の答申結果や個人情報保護条例の運用などについての情報提供、本人通知制度[事前登録制]運用時のトラブル対応などに対する助言など、的確なフォローアップをおこなっていく。
第3には、有資格者である8業士の各士業会に対して、ていねいな本人通知制度[事前登録制]説明を実施するとともに、訴訟を提起された場合には適切な助言や情報提供をおこなっていく。
そして第4には、住民に対する本人通知制度[事前登録制]の周知方法や登録者への説明マニュアル作成など、本人通知制度の周知方法についての助言をおこなっていく。
本人通知制度[事前登録制]にかかる今後の大阪府の役割と取り組み方針② 国に対して
国(法務省および総務省)に対しては、今後も法整備を要望していく。具体的には、大阪府内で実施されている市町村の実績や運用上の課題を具体的に国(法務省および総務省)に示しながら、現行戸籍法および住民基本台帳法に本人通知および情報開示についての規定を創設するように要望していくことになる。
本人通知制度[事前登録制]実施にあたっての法務省見解の概要
また、本人通知制度[事前登録制]実施にあたって、大阪法務局を通じて法務省に確認した内容(概要)は以下のとおりになる。
- 大阪府の本人通知制度[事前登録制]は、ぎりぎり戸籍法に抵触していない。
- 法に抵触していない限り、支障がなければ自治体に制度導入についてストップはかけられない。
- 本人通知について、法務省としては戸籍法に根拠がないので、通知の良し悪しは言えない。
- 大阪府の本人通知制度[事前登録制]が交付請求を拒否(制限)する制度でないことは理解できる。
(文責・松下龍仁)
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