今回は大阪駅前第2ビルの5階に昨年11月にオープンした大阪市立生涯学習センターの見学、および大阪市における生涯学習施策、それに関わる人権教育事業の研究を行った。
大阪市では、「生涯学習大阪計画」を1992年2月に策定し、生涯学習を支援するための「地域」「ターミナル」「広域」の3つの学習圏を設定、多彩な生涯学習活動を総合的に推進していくために、ネットワークや生涯学習インストラクター制度を導入した生涯学習施策に取り組んでいる。
総合学習センターは、(1)情報提供と学習相談、(2)企画開発とネットワーク、(3)人材養成・研修、(4)市民との協働・交流活動支援、(5)シティカレッジ事業(大学、専門学校、民間教育機関とのネットワーク形成)の5つの機能をもち、市民の誰もが、いつでも、どこでも、必要に応じて楽しく学び続けられる「人間尊重の生涯学習都市・大阪」を目指している。
総合生涯学習センターで担当する人権教育事業について
現在、大阪市では1995年に策定された「大阪市識字施策推進指針」に基づき、あらゆる非識字者の文字や言葉の問題を解消するため、総合的な識字・日本語施策の推進を図っている。
具体的な取り組みとしては同和地区における識字学級、夜間中学学級、社会教育施設等における(外国人を対象とした)日本語読み書き教室である。
これらの取り組みは文化庁委託事業研究「大阪市地域日本語教育事業」として、日本で暮らす外国人教育を含む識字・日本語教育をトータルでとらえる日本語教育推進体制の検討がはかられている。そのため1999年度より、これまで同和対策事業として行ってきた識字学級と一般施策で行われてきた社会教育施設等での地域日本語学習の取り組みを体系的に捉え、「識字推進事業」として一般施策化した。
現状としては、大阪市内の人権文化センターでの識字学級は12学級、(約150名)社会教育施設識字学級は5学級であり、説明の中では外国人学習者と地区における非識字者の割合が逆転してきていることも報告されている。
しかし、識字学級は、差別によって、奪われた文字を奪い返すという運動と歴史的背景としての固有の課題があり、一概に他の一般生涯学習事業と統合することはできない。
成人教育の学習課題には必要課題と要求課題があるといわれるが、他の多くの生涯学習が後者であるのに対し、識字学級はもっとも基礎的な前者であり、それを保障することは今なお行政責任であると考える。識字学級に今後も行政がどこまで関われるのかが今後の課題であろう。
また地区内の潜在的非識字者の実態把握と、識字にいこうと思える動機づけ(成人教育ではこれを内発的動機と外発動機に分類)、仕事などの生活環境といかに両立させるか(学習環境の整備)は、今後の重要な課題となる。
1999年の「男女共同参画社会基本法」制定を受けて、大阪市が「男女平等推進事業」の一環として、人権教育を推進し、同和地区の講習・講座事業を一般施策化したとの報告を受けたが、人権教育の一つである「男女平等教育」の中に部落差別からの解放という視点をどう位置づけるかが課題である。
いずれにせよ先述した成人教育における動機づけと学習環境の整備は、識字活動に限らず、生涯学習社会を形成していく上で共通の課題であり、今後ますます取り組んでいくべき分野である。