調査研究

各種部会・研究会の活動内容や部落問題・人権問題に関する最新の調査データ、研究論文などを紹介します。

Home調査・研究部会・研究会活動啓発部会 > 学習会報告
2004.04.10
部会・研究会活動 <啓発部会>
 
啓発部会・学習会報告
2003年11月15日
部落問題に関する意識形成調査研究の成果と課題

益田 圭 (相愛女子短期大学教員)
妻木 進吾(大阪市立大学大学院生)

 2003年3月に発行された冊子「部落問題に関する意識調査研究報告書」をもとに、2人の研究者を招いて報告をしていただき、今後の部落問題解決につながる啓発活動のあり方を議論した。

被差別部落に関する意識・形成過程

 まず、相愛女子短期大学人間関係学科教員の益田圭さんから、社会心理学的な視点から、人権意識の形成について報告があった。ここでは、上記の報告書の中で行った「部落解放・人権大学講座」の修了生へのインタビュー形式による意識調査結果を中心に、部落差別・差別問題に対する関与についての報告が中心となった。

 コミュニケーションによる差別・偏見の解消を目指す場合、周辺的態度変化と中心的態度変化が見込まれる。中心的態度変化は、周辺的態度変化に比べて、メッセージの内容が自分に関わりがどれだけ深いかという関与に規定され、「具体的行動の選択」にまで影響する。

 また様々な立場を持つ人々への啓発を意識して、仕事、家族、組織など、啓発活動には領域の多重性が存在することも確認される。ある領域で意識や行動が生じたとしても、必ずしも、その他の領域で反差別の意識や行動が生じているわけではない。したがってこれからの啓発活動は、部落差別や人権問題への関与が高い形での啓発、また領域の多重性を念頭に置いた啓発を行っていかなければならない。

反差別に結びつく意識の形成過程

 つぎに大阪市立大学院生の妻木進吾さんからは、先に紹介した意識調査結果による具体例をもとに、部落問題に対する意識の形成、維持、プロセスを報告していただいた。ここでは、職場や地域など様々な社会的背景をもつ、「部落解放・人権大学講座」の修了生の具体的体験談をもとに、人々が差別に気づき、立ち向かうことを期待する「反差別役割」の取得が啓発活動において重要となる。

 また、啓発活動において、被差別の立場の人々との接触が重要な役割を持つことが報告された。例えば幼少時代、部落問題について、自らが、いじめられていた経験から、「(部落の子が)友達やったらええなあ」と感じたという体験談が紹介される。この場合、部落を心理的に避けようとするのではなく、むしろ接近しようとする態度が見受けられる。人権のまちづくり運動などにも見られるように、人権問題において偏見や心理的差別をなくすうえでも、共同の営みが重要であり、積極的関与が必要となる。 (文責・事務局)