調査研究

各種部会・研究会の活動内容や部落問題・人権問題に関する最新の調査データ、研究論文などを紹介します。

Home調査・研究部会・研究会活動啓発部会 > 学習会報告
2007.9.20
部会・研究会活動 <啓発部会>
 
人権啓発センター研究会/啓発部会 合同学習会報告
2007年7月25日

1.人権(啓発)センターの現状と課題

上杉 孝實(畿央大学教授)

〈第1報告〉

 本報告は『人権年鑑2007』で、研究所に寄せられたアンケートをもとにした概況である。詳細はそちらをご参照いただき、ここでは課題を中心に報告したい。

 42センターを対象に、回答いただいたのは38。運営主体は極めて多様で、県が11、市が14、法人が12(財団9、社団3)、任意団体が1である。

 人権啓発センターのない市町村は多いが、公民館は一般的な社会教育施設として市町村立である。府県レベルでの人権啓発センターが、公民館や学校など、各種機関・団体と連携することが機能を発揮していく上で大きく必要である。

 講座・講演会34、人権に関わるイベント18。指導者養成・研修会は23で、啓発指導者対象と、人権相談員対象とがある。企業啓発への取り組みはやや少なく11。

 資料の提供など図書館的機能、ライブラリー機能は29だが、資料貸し出しは34で行われている。ただ、男女共同参画センターなどではライブラリーに詳しい職員が置かれているが、人権啓発センターではどの程度、十分なものになっているのか危惧される。

 調査研究は15で取り組まれているが、課題としては、啓発対象や手法が広がる中、その効果の研究や教材開発が必要だ。

 相談事業は36と多く、人権侵害相談が32で、啓発相談は27。

 人員配置についてだが、内容を充実させていくためには、専門性の高い職員の配置、職員への研修の機会の保障を検討すべきだ。また、センター所長は一定の意思決定がなせるよう、少なくとも課長級以上の位置づけが望ましい。

 人権啓発センターは総合的に人権問題を取り上げるわけだが、その中で部落問題はどのように位置づけられているのか。男女共同参画センターなどの他の人権課題との違った特色をどう出すかは大きな問題である。

2.「(社)甲賀・湖南人権センターの取り組み」

立岡 勇一(甲賀・湖南人権センター)

〈第2報告〉

 旧の滋賀県甲賀郡域が町村合併で甲賀市と湖南市と2つの市にわかれ、両方あわせて人口15万。

 当センターは鳥取県人権文化センターと同じ法務省認可。「人権尊重のまち宣言」、人権条例を基本に、これらを行政施策として推進していくための専門機関として、1999年4月に設置された。

 両市ともに「人権に関わることはなんでもセンターに相談したら」とトップが支持してくれているので、連携ができている。

 甲賀・湖南地域の行政職員の職階別研修はすべてセンターがコーディネートしている。企業人推協と連携しながら行う企業研修や、学校の教職員・保護者への研修もしているが、常に職員が現場に足を運び、悩みに答えていける研修計画・講座をしている。保幼小中に働きかけ、同和研修部など人権問題の専門的な部を8割強で設置していただけた。市会議員さんも自ら人権尊重推進議員会という組織をつくられ、当センターが定期的に学習会を実施している。

 調査研究としては町村合併の際の05年3月に意識調査を行ない、5年ごとに行う予定。土地差別の調査や男女共同参画、障害者の実態調査も行政と共にすすめている。また部落解放・人権研究所にお願いし就労支援計画も行っている。

 人権関係資料・情報の収集には力を入れていて、全国人権展示ネットに参加し、職員には外部研修への積極的参加を促している。

 他のセンターに比べて若干弱いのはいわゆる「社会的弱者」に対する就労支援など福祉向上の取り組み。人権週間の街頭キャンペーンなど、行政が月間・週間啓発活動を行う際の物品事務を障害者の作業所でつくるなどのコーディネートをしている。在日外国人支援では、湖南市は人口の約8%、甲賀市も約5%のニューカマーがおられ、医療、教育等の相談や教育ガイダンス、母語・日本語の学習会など開催している。

 また啓発活動では、街角で歌っている若者たちに人権コンサートに無料で出演してもらい、参加者が広がっている。その歌詞から若者の思いをとらえられるという点でもいい手法だと思う。

 人権相談は毎年250件近くある。来た相談は全て受け、専門機関へつなぐ場合でも職員が同行し、最後まで安心できるようなコーディネートをしている。顧問弁護士、顧問税理士とも契約しており、職員対象に詳細なマニュアルをもとに学習会を何回もしている。

 ネットワークサロン支援事業では、26の市民団体が登録され、半期2万円程度の支援をしている。定期的に集まり意見交換しながらネットワークを広げている。

 今後も同和問題の解決を柱におきながら人権問題に取り組んでいこうと思っている。

 なお、静岡人権啓発センター、徳島県立人権教育啓発推進センター、近江八幡市人権センター、和歌山県人権啓発センターからのご参加を得、簡単な活動報告と情報交換も行われた。

(文責:栗本知子)