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企業部会・学習会報告
2001.11.1

企業と社会の新たなかかわり方
−地域社会の活性化にむけて−

島田智之

(関西経済連合会・企業と社会委員会ワーキンググループ座長、
日本生命保険相互会社企画広報部部長)

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経緯

 2001年3月、関西経済連合会の企業と社会委員会では「企業と社会の新たなかかわり方」という提言書をまとめました。

 21世紀は地域の時代といわれています。経済のグローバル化や情報化がすすむなかで、住民が自ら地域を選ぶ時代になるだろうと考えています。そのため地域も住民に選ばれるように住みやすさや仕事のしやすさなど経済的、文化的に魅力ある地域づくりをはかり、地域のアイデンティティを明確に打ち出すことが必要になるだろうと考えています。

また、まもなく団塊の世代が定年をむかえることになり、多くの元気な引退世代を地域が受け入れることになります。そのようななかで、地域住民の能力を地域の活性化に活かすシステムができれば地域も住民もともにハッピーではないか、そこへ企業がどのように関われるかということを考えました。

 その前提として、これからの企業は利益を追求するだけでなく、地域社会や環境、男女差別の撤廃など多くのステークホルダーに配慮した経営を指向すべきではないかという問題意識をもっていました。そこで、一橋大学の谷本寛治さんをアドバイザーにむかえ、理論的な裏付けをはかるとともに、谷本さんの示唆もあって、昨年9月に先進的な事例がたくさんあるアメリカへ調査に行き、検討の素材を集めてきました。

 そして提言では、2つのことを主張しています。1つは、企業を取り巻く社会環境が大きく変化してきているなかで、これから企業はどのような基本スタンスにたって行動していくべきなのかという方向性を「責任ある企業行動のガイドライン」という形で提示しました。もう1つは、地域社会の活性化に向けて企業はどのような役割を果たせるのか、具体的にどのように働きかけていけばいいのかということについて考え方をまとめました。
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企業を取り巻く社会環境の変化

 大きな変化として、マイナス成長の時代、消費者の意識の高まり、循環型社会への移行があげられます。また、中央から地方へ、官から民への動きが大きくなってきています。そして、グローバル化、情報化が進展してきています。

 これらのことは、社会からの企業に対する見方・期待を変化させてきています。

 アメリカでは、企業評価の尺度が、株主利益などの「財務的評価」だけでなく、環境や人権、雇用の公平性、地域社会への貢献など、企業の社会的責任をどう果たしているかといった、いわゆる「社会的評価」の部分をも重視するようになってきています。そして、NPO等の各種評価機関が、企業行動を多様な基準で評価、格付けするようになっていきた結果、企業もそれに応えるようになってきています。

 また、社会的評価の高い企業に投資する社会的責任投資(SRI)が急成長してきており、運用実績は「S&P500株価指数」よりも高く、アメリカのファンド全体の13%にも達しています。

 これらのことは、企業の社会的責任についての意味合いが、変化してきていることを示しています。従来は、企業の社会的責任については企業の事業活動を通じた商品・サービスの提供や雇用、納税という側面で捉えられてきました。

 しかし、今日では、企業の行う事業プロセスのすべてにおいて、環境や人権あるいは、地域社会等にも気を配ることが社会的責任として求められています。言い換えれば、企業は、企業を取り巻く様々なステークホルダーに配慮し、これらとの良好な関係を形成することが必要とされているということです。

 また、アメリカでは、社会的に責任ある行動をとることが、ブランド・イメージ戦略あるいは、リスクマネジメントなどの観点からも捉えられ、これに対し積極的な取り組みが進められています。
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日本の課題

 アメリカでの動きは、決して対岸の火事ではありません。自らの問題として前向きに捉え、社会的責任を心がけた企業経営を進めていくことが必要です。

 また、企業の取り組みを積極的に情報開示することも必要です。そのことが企業イメージを向上させ、競争力を高めることなどにもつながります。

 さらに、社会的に責任ある行動をしている企業の取り組みを評価し、表彰するなど社会もこのような企業行動を支援することが求められます。アメリカにおいても、いくつかのNPOが、いろいろな視点で、社会的責任ある企業行動を実践している企業を表彰しています。

 企業が社会的責任を果たすためには、周辺の環境作りが必要です。また、優れた企業の取り組み事例についての情報データベースを構築し、公開することで、企業や消費者、株主が参考として活用できるようにすることも大切なことだと思います。
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企業と地域社会との新たなかかわり方の構築

 ステークホルダーの1つに地域社会があります。

 地域のかかえるニーズは、今日、多様化してきています。そして、これまでの行政が行っていた分野においても企業やNPOが役割を果たすことが期待されています。

 しかし、その際に大事なことは、企業は本業を通じて地域の課題解決にかかわることであると考えます。本業を通じることで、企業にもメリットがありますので、継続してかかわることができます。その結果、地域が活性化されれば地域も企業もお互いにハッピーになります。

 これまでも地域の課題に企業はいろいろな形でかかわってきていますが、そこでは、企業の目線で、しかも1企業が単独でおこなうことがほとんどでした。

 しかし、1企業で行うことには自ずと限界があります。これからは、地域の目線で、NPOや行政とコラボレーションして地域の課題解決に当たるようにすべきだと思います。それにより、地域のニーズに即した課題解決がはかれますし、高い効果も期待できると考えます。そのためには、企業とNPOとのネットワーク作りが必要だと考えています。

 経済団体としてもNPOを支援する中間支援団体と連携をとり、企業とNPOとのつながりを強化し、様々な活動展開を模索していこうという提案をしています。また、もう一方で、経営トップがこのような活動に理解を示すことも必要です。

 例えばトップがNPOの役員に就任する等、NPO活動にかかわりを持つことで、企業や従業員も地域社会の活性化に向けた相応な活動がしやすくなります。このように、これからの企業は、従来の寄付やフィランソロフィーだけにとどまらず、本業を通じて地域の目線で、地域の活性化に参画していくことが大事ではないかと考えています。
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(参考)
「企業と社会の新たな関わり方−地域社会の活性化に向けて−」社団法人関西経済連合会 企業と社会委員会

「企業と社会委員会 米国調査団報告書(2000年9月11日〜9月21日)」 社団法人関西経済連合会 企業と社会委員会