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企業部会・学習会報告
2001.6.11

女性の視点から見た企業評価

(報告)金谷千慧子(女性と仕事研究所代表)

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はじめに

女性と仕事研究所は、昨年NPO資格を取得し、女性の仕事に関わる支援をしている。

20年前から女性がきちんと働ける環境のために底辺から押し上げる活動をしていたが、トップの意識や企業文化を変えることの必要性を感じ、3年前からは企業の方へアプローチを始めている。このきっかけとなったのは、アメリカの「カタリスト」という女性の支援をしているNPOの活動を知ったことからである。

カタリスト

カタリストは、1962年から活動を始め、女性の再就職や失業の応援していた。しかし、1985年から「グラス・シーリング(ガラスの天井)」を取り外さなければならないという運動が始まり「女性の昇進や昇格を止めていることは、損失」という政府、民間企業、NPOの統一見解が出され、さまざまな政策が始められるなか、女性のトップを作り出すための応援へ方向転換をした。また、フォーチュン誌で表彰されるような企業も、女性の活用を求められるようになった。

アファーマティブアクション

アメリカのアファーマティブアクションでは、1960年代から始められ、現在3割以上のマイノリティーの確保を求めていっている。「黄金の3割」といわれ、後戻りできない数字とされている。

クォーターシステムといわれる北欧のシステムでは、人口比に応じて、男女が活躍していることが求められている。また、日本やEUでとられているポジティブアクションは、同じ能力、成績ならばマイノリティーを採るという考え方で、アファーマティブアクションよりは緩いものである。

平等には、「差別をなくす」概念と「平等をつくる」概念とがある。世界的には、1960年代に雇用機会均等法など入り口を平等にする法律がつくられた。日本では、男女機会均等法が1985年に制定されたが、これは「差別をなくす」法律である。しかし、多くの国では、その2〜3年後に男女平等法などの「平等をつくる」法律が作られ、日本でも1999年の改正均等法でポジティブアクションが入れられた。

多くの国において、ポジティブアクションやアファーマティブアクションがとられてきた背景には、グローバルスタンダードで、厳しい国際競争に企業がさらされていくなか、能力のある社員を活用することで、企業が収益性を高めてきたことがある。

日本企業も同様の環境におかれつつあり、結婚や出産後も女性の能力を活用することが、企業の利益を上げることになる。また、育児休業法の抜本的改正などにより女性の働く環境が整い、男女の生活観が変化することで、少子化への歯止めともなっていく。

今後の取り組み

 アメリカのカタリストと同じように、企業に対しても、女性に対しても効果の高い活動を考えている。例えば、既存の能力をフル活用した企業利益のアップ、企業の競争力の強化、変化に強い人材の強化、女性のやる気、所得のアップ、仕事の高度化、女性のロール・モデルをつくることなどである。

 また、カタリスト協会では、カタリスト賞を企業に出している。この賞は、女性に関わるダイバーシティ・プログラムやワーク・ライフバランスなどの政策目標を提示して賞に応募し、その成果と企業利益の結果で受賞が決められている。

 しかし今後、アメリカのような施策が日本でも普及していくには、終身雇用制度の変革がポイントになる。現在の制度では、女性に不利に働くことになり、企業の求める能力と本人の能力による採用、職務による評価を徹底していくが求められている。

 また、企業ごとに課題を明確にする一方、女性の配置一覧表を作成し、どのような状況かをまず把握する必要がある。そして、女性を信じて、計画的に、女性と相談をしながら、目標達成を支援していくことから始めなければならない。(坂東知博)