〈はじめに〉
12年前CEPの『shoppingforabetterworld』から下村満子さんがヒントを得て、「企業の社会貢献度調査」を朝日ジャーナルの編集長の時代に始めた。一部の週刊誌からは「時期尚早」「結論が見えている」などの批判があった。しかし、「企業が変われば社会が変わる」という信念でさまざまな経過をたどり、現在、朝日新聞文化財団企業の社会貢献度調査委員会が編集し、PHPから毎年発行されている。
評価の手法は、CEPが、アルコールや兵器などのマイナスのポイントもレイティングに含めているのに対し、「社会貢献度調査」では企業からの提供情報に基づいて評価している。このためデータが公になっていないことや「横並び」などの課題がある。
〈調査委員会〉
調査委員会が、調査を依頼している企業は、「消費者に近い企業」「未上場であっても大きな企業」で、その他に自主参加の企業もあるが、ほとんどが外資系企業である。
9月に調査票を発送し、11月を締め切りとしている。回答された調査票を基に中間評価を作成し、点数や自由記述について委員会でまとめたものを返している。
調査票を依頼しても、メセナについては回答されるが、人事に関わる設問では、回答されてない場合が多い。しかし、一部でも回答されていればいいし、企業が「公表したい」ものは、そのための努力をしていると積極的に考えている。
その後、不明な点などを直接、質問するなどして最終的な評価を出している。
毎年、回答している企業では、答え方のテクニックをつけているところもあるが、回答することで会社の姿勢があらわれ、それを応援するものとして本書を発行している。
400社中180社ほどが回答してきている。また、5回目から部門ごとの賞や最優秀賞、特別賞などの表彰を実施している。
〈今後の課題〉
社会の変化のなかで、これまでの設問のテーマなど変更を考えている。たとえば「社員にやさしい」は「ファミリー重視」に。「地域との共生」と「社会支援」とは一つにまとめる。「雇用の国際化」は「国際化」として、「開発途上国での児童労働」や「海外での贈収賄」に変更することなどを検討している。
またグローバル化の中で、SRI(社会責任投資)の投資先企業を選定するため、協力依頼が海外からあったり、20年かけて行動規範をつくり実践してきたアメリカ企業と競争するとき、規範の有無が大きなポイントになるなど、今日の企業にとっても社会的責任をはたすことの意味は大きい。そして、CEP、ILO、OECDなどの国際的な労働基準のひろがりにより、積極的な企業の社会貢献、社会的責任が求められていくことになる。 (坂東知博)