調査研究

各種部会・研究会の活動内容や部落問題・人権問題に関する最新の調査データ、研究論文などを紹介します。

Home調査・研究部会・研究会活動企業部会 > 学習会報告
部会・研究会活動 <企業部会>
 
企業部会・学習会報告
2001.1.24

関西企業の倫理実践の現状と課題

社団法人 関西経済連合会 事業推進第1部
小林 義彦

-----------------------------------------------------------------------------

<1>.会員アンケートにみる企業の対応と社員の意識

1.わが国企業を取り巻く環境と変革の方向

(1)企業絡みの不祥事の続発に伴う、わが国企業・経済界に対する不信感の高まり

 → 自己責任原則と経済活動ルールに基づく「節度ある企業行動」の実践

(2)グローバル化、メガ・コンペティションの進展

 → 自由、公正、透明等をキーワードとする「世界に通用する企業行動」への変革

2.企業倫理の実践に関する企業の取り組み状況と社員の意識

(1)企業倫理(business ethics)とは

(2)日本企業の現状

  1. 進む倫理綱領の作成・改訂





※各種調査にみる倫理綱領等を有する企業の比率

  • 経営倫理学会(96年5月) 22.3%
  • 監査役協会(97年1月) 39.6%
  • 経 団 連(97年11月) 38.1%
  • 関 経 連(98年7月) 51.8%
  • 朝日新聞文化財団(99年7月) 64.3%

2. 社内における企業倫理の周知・徹底が今後の課題

  • 倫理教育を定期的に実施している企業は34.5%。講義や訓示的な教育が一般的。
    →最近では、ケース・スタディや討論型の社員研修・セミナーを実施する企業が増えてきている。
  • 業種間の格差
    取り組み進む「不祥事型」、「国際化型」、「環境影響型」、「健康関連型」の企業
  • 企業倫理の導入・実践に関する最大の関心事は「企業倫理の周知・徹底、及びフォローアップ体制」。

3. 米国企業の取り組み

  • 『フォーチュン』誌のトップ1,000社のうち、倫理綱領等を有する企業は98%。
  • 歴史的経緯
    「海外腐敗行為防止法」(77年)
    「軍事産業イニシャティブ」(86年)
    「連邦量刑ガイドライン」(91年)
  • 特徴
    a) 倫理担当重役や倫理オフィスを設置し、倫理綱領を実践するための支援システムを充実
    b) 倫理オフィスや法務担当の部署がかなりの権限を持って行動
    c) 倫理教育やトレーニングが実践的
    d) 倫理コミュニケーションに対する取り組みが活発で、倫理ヘルプラインが中心

4. 個別企業の事例

 ・TI(テキサス・インスツルメンツ)のエシックス・カード(抜粋) 

    正しいことを知ろう。正しいことを尊重しよう。正しいことをしよう。

    もし判断に迷ったら、

  • 「それ」は法律に触れないだろうか。
  • 「それ」はTIの基本方針に合っているだろうか。
  • 「それ」をすると良くないと感じないであろうか。
  • 「それ」が新聞にのったらどう映るだろうか。
  • 「それ」がただしくないとわかっているのにやってないだろうか。

    不明な点がありましたら、納得のゆくまで上司その他関係者に確かめて下さい。

(3)企業倫理に関する社員の意識−個人の良心と会社の方針のジレンマ?− (表1)

表1 回答者の属性別にみた倫理意識の差異

  綱領認知深 導入必要 利益理想 利益現実 社会的倫理選好 倫理開示 社会的倫理支援
良心反*
総計 31.5% 1.21 0.68 0.20 0.23 −0.84 −0.05 −0.06
綱領認知度別 綱領認知深 1.53 0.84 0.51 0.44 −0.71 0.18 −0.37
綱領認知浅 1.07 0.65 −0.02 0.06 −0.92 −0.23 0.21
綱領なし

1.06 0.56 0.16 0.21 −0.87 −0.07 −0.08
年齢別 25歳以下 7.1% 0.90 0.59 0.10 0.14 −1.02 −0.16 −0.07
26〜35歳 24.0% 1.10 0.66 0.07 0.01 −0.85 −0.23 0.14
36〜45歳 31.3% 1.17 0.65 0.14 0.23 −0.76 0.06 −0.10
46〜55歳 35.3% 1.35 0.68 0.35 0.37 −0.82 0.00 −0.17
56歳以上 52.0% 1.35 0.91 0.30 0.33 −0.98 −0.04 −0.11
性別 男性 33.8% 1.24 0.68 0.24 0.26 −0.81 0.02 −0.11
女性 17.1% 1.05 0.68 −0.04 0.03 −0.97 −0.49 0.25
職位別 一般職員 19.7% 1.12 0.74 0.03 0.05 −0.91 −0.25 0.12
管理職 39.5% 1.28 0.65 0.32 0.34 −0.77 0.08 −0.18
役員

37.8%

1.27 0.62 0.27 0.45 −0.93 0.10 −0.22

(注)一番左の項目(綱領認知深との回答比率)を除き、各数値は評点総和法に基づく平均点(+2点に近いほど、当該質問項目を支持する傾向が強いことを示す。)
*:良心反は、プラス点は非倫理的に行動する傾向を、マイナス点は倫理的に行動する傾向を示す。


1. 倫理は儲かるか−理想と現実− 

2. 組織風土の改革と経営トップのコミットメント

  1. 綱領の内容を良く理解している人ほど、より良心に忠実で、企業倫理に前向きな態度を取る。
  2. 「26〜35歳」、「女性」、「一般職」「経理・財務」等のグループは企業倫理に対して比較的冷めた見方。→企業倫理の実践を阻む「暗黙の圧力」?
  3. 倫理綱領が建て前ではなく、社員一人一人が遵守すべき行動基準として理解され、実践されるためには、組織風土の改革と経理トップのコミットメントが不可欠。

3. 個別企業の取り組みを支える社会環境の整備

  1. 社会的倫理選好の形成
  2. 倫理ディスクロージャーの推進
  3. 社会的倫理支援体制の整備

※企業倫理に関する意識調査(学生vs社会人)

学生の冷めた見方は社会の反映?
 

 

導入必要

利益理想 利益現実 倫理選好 倫理開示 倫理支援 新卒者 社会不正 良心反
社会人

1.21

0.68 0.20 0.23 -0.84 -0.05 -0.15 0.07 -0.06
学 生

1.29

0.56 -0.41 -0.21 -1.36 -0.63 -0.19 0.71 1.14


3.関経連企業と社会委員会提言

「企業倫理の実践に向けて−『倫理法令遵守マネジメント・システム』構築の提案−」

(1)倫理法令遵守マネジメント・システムとは

企業などの組織が関連する法令や適正な業界ルールなどの遵守を徹底するとともに、自ら掲げる倫理規範を実践するための組織内の仕組み。

(2)倫理法令遵守マネジメント・システムの基本的枠組み



(3)提言の狙い−3段階での変革(改革)をめざす−

  1. 個別企業における倫理法令遵守体制構築の一助となること

  2. 社会レベルにおける倫理改革の推進

  3. 日本が提唱し、リーダーシップをとってグローバル・スタンダードを形成すること


--------------------------------------------------------------------------------

<2>.変わる企業評価の尺度と社会的責任ある企業行動の推進

1.企業評価の尺度―財務的評価に加え、社会的評価も重視―

(1)フォーチュン誌「最も賞賛される米国企業」番付 [http://www.fortune.com/]

  • 2000年2月28日付ランキング
    1位 GE、2位 マイクロソフト、3位 デル・コンピューター...
  • 評価基準
    革新性、マネジメントの質、従業員の才能、財務の健全性、企業資産の活用、長期的な投資価値、社会的責任、製品・サービスの質

(2)社会的責任投資(SRI)

1. 米国におけるSRI型投資の拡大(特に90年代以降)

84年 400億ドル → 99年 2兆1,600億ドル(総運用資産の13%)

2. 米KLD社株価インデックス「ドミニ400ソーシャル・インデックス」の投資スクリーニング [http://www.kld.com]

<除外スクリーニング>

アルコール、ギャンブル、タバコ(以上、Sin Stock=罪深い株式)、原子力、軍事関連産業

<評価スクリーニング>

環境、従業員との関係、多様性(雇用、昇進等)、コミュニティ、プロダクト/品質、役員報酬等、米国外での事業

3. 日本の動き

99年夏以降、エコファンドや社会貢献ファンドが登場

(3)グリーン・コンシューマリズム

1. 米CEP "Shopping for a Better World"誌 [http://www.cepnyc.org]

  • Fortune500, S&P500から抽出した200社2,100ブランドについて企業別ランキングを公開。88年創刊。
  • 評価基準は環境問題、女性の登用、マイノリティの登用、寄付、職場環境、従業員の家族への配慮、および情報公開の7分野
  • 上記7分野の得点を合計し、ホームページ状にランキングを公開
    1位 リーバイ・ストラウス、2位 エイボン・プロダクツ、3位 アメリカン・エキスプレス

2. 朝日新聞文化財団「有力企業の社会貢献度調査」

  • CEP調査を参考に90年より実施。
  • 評価基準は次の11項目。評価のキーワードは公正さ、透明性、平等性、先進性。
  • 社員にやさしい、ファミリー重視、女性が働きやすい、障害者雇用、雇用の国際化、消費者志向、地域との共生、社会支援、環境保護、情報公開、企業倫理

(4)国際規格構築の動き−品質・環境から労働・人権へ−

1. SA8000(Social Accountability 8000) [http://www.sa-intl.org

1997年、CEPが公表。児童労働や強制労働など、不公正かつ非人道的な労働慣行の撤廃を目的とする、倫理分野では初の国際規格。

2. グローバル・コンパクト [http://www.unglobalcompact.org/]

99年1月、ダボス会議でアナン国連事務総長が世界のビジネスリーダーに対して呼びかけたもので、人権の擁護、労働環境の整備(児童労働の放棄など)、自然環境の保護の3分野をカバーする9原則で構成される。

(5)サイバー・コミュニティの誕生

 インターネットの急速な普及により、企業情報、とりわけ、悪い情報は、企業行動に関心を持つ個人やNPO、企業評価・格付け機関等によって一瞬にして世界を駆け巡る。

2.社会的に責任ある企業行動とは

(1)企業の社会的責任とは

倫理的価値を尊重し、法令を遵守し、人やコミュニティや環境に配慮した企業経営を行うこと。企業の多様なステイクホルダー−株主や従業員、顧客だけでなく、コミュニティや環境を含む−に対する責任のバランスをとることが重要。

  • 米国も90年代前半までは株主中心主義。しかし、今日では、株主利益の最大化だけに目を向けていては、市場社会で評価されず。 

(2)企業と(地域)社会の関わり

<これまで>

  • 本業=社会貢献の発想
  • 本業を離れてのメセナ・フィランソロピー活動を通じた社会貢献

<これから>

  次の3つを戦略的に推進することが重要。また、陰徳とするのではなく、積極的な情報開示が消費者や投資家、地域住民だけでなく、従業員の企業評価にもつながる。

  1. 企業の経営資源を活用した社会貢献活動
    • 金銭的寄付による社会貢献
    • 施設・人材などを活用した社会貢献
    • 本来業務・専門技術を活用した社会貢献
  2. 社会的商品・サービス・事業の開発

  3. 経営活動のプロセスに社会的公正性、倫理性、環境への配慮等を組み入れる。

(3)企業の経済的責任と社会的責任

  • 経済的責任
  • 社会的責任
    倫理法令遵守、社会貢献活動、多様なステイクホルダーとのWin-Winの関係構築

--------------------------------------------------------------------------------

<3>.おわりに

  • 価値観・使命感の共有・具現化

以 上


--------------------------------------------------------------------------------
--------------------------------------------------------------------------------

企業倫理に関する意識調査

※ 本調査は、関経連企業と社会委員会が98年7月に実施した会員企業社員に対する意識調査からの抜粋です。今後の当会活動の参考とさせていただきたく、ご出席の皆様のご協力をお願いします。講演終了時に本紙のみ、提出をお願いします。

※ 以下の考え方に関して、回答者個人としての立場から、率直なご意見をお聞かせ下さい。それぞれの考え方に対して、あなたの意見にどの程度合致しているか、次の5段階で評価して下さい。

  そう思う←←   →→そうは思わない

5   4   3   2   1

 

     1) 会社は企業倫理を積極的に導入すべきである。(ここにいう「企業倫理の導入」とは、人権や法令の観点から、各人が守らなければならない倫理規定や行動憲章を企業内で策定し、その遵守を徹底させる活動を指します。)
  2) 企業倫理の実践は、会社の利益につながるべきである。(ここにいう「企業倫理の実践」とは、経営幹部から一般社員までが倫理規定などに従って行動することを指します。)
  3) 現実に、企業倫理の実践は会社の利益につながっている。
  4) 消費者や取引先は、企業が倫理に取り組むことを高く評価している。
  5) 大株主や銀行などの機関投資家は、企業が倫理に取り組むことを高く評価している。
  6) 新卒者は、企業側の倫理への取り組みを、就職先の決定に当り、かなり重視している
  7) 企業は倫理への取り組みを積極的に公表しないため、社会はいったいどの企業が倫理導入に取り組んでいるのかよくわからない。
  8) 倫理実践の度合いを示す「共通の評価基準」がないため、社会はいったいどの企業がどれくらい真剣に倫理の導入に努力しているのかわからない。
  9)過剰接待事件や裁量行政問題でもみられたように、日本では、ある程度まで不正なこともしなければ、仕事や認可が容易に得られない。
  10) 会社のやり方や方針が、自分の良心に反したとしても、最終的にはそれを受け入れなければならないことが多い。
  11) 倫理導入に力を入れいている企業を優遇するような税制や認証制度が整っていないため、企業の倫理に対する取り組みはなかなか進展しない。
  12) 企業による法令違反行為や反社会的な行動が発覚しても、罰金額は低くその懲罰も緩いため、倫理導入の緊急性はあまり感じられない。
  13) 企業による法令違反行為や反社会的な行動が発覚しても、一時的な批判だけで消費者による厳しい不買運動は起こらない。このため、倫理導入の緊急性はあまり感じられない。
  14) 企業による法令違反行為や反社会的な行動が発覚しても、他企業から取引を停止されたり、経済団体や業界団体から会員資格を剥奪されたりすることも頻繁には起こらない。このため、倫理導入の緊急性はあまり感じられない。


※最後に、あなたご自身についてお伺いします。該当欄に○印をつけてください。

[年 齢] ( )25歳以下 ( )26〜35歳 ( )36〜45歳

      ( )46〜55歳 ( )56歳以上

[性 別] ( )男 性   ( )女 性

ご協力有難うございました。