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企業部会では、企業倫理綱領を確立する仕組みとして考えられたECS2000についてプロジェクト・リーダーである高巖氏にご講演をいただいた。
企業倫理とは、『公正かつ適切な経営を行うための企業内活動』であり、その柱は、経営理念などの精神的支柱の作成とそれを経営活動に反映させる具体的な仕組みづくりにある。
企業倫理の当面する基本的な考え方は、リスク・マネジメントであり、あらゆる経営活動にかかわるネガティブな部分を取り除くことが目的である。
日本においても80年代後半の金融機関の失敗から不正をチェックする仕組みが強く求められた。また、現代は、企業が市民生活と複雑に関連しあっており、規模にかかわらず失敗による波及効果が大きい。それを押さえるということで企業倫理がいわれはじめた。
また、エコ・ファンドの成功や朝日新聞文化財団の社会貢献度調査の発行など倫理的な企業が社会的な評価を得てきている。
アメリカでは、1960年代から企業倫理が言われはじめた。それ以後、今日まで法律などの社会制度の整備がすすみ、企業活動に強い影響を与えている。そして、90年代以降と30年の遅れがあるが、日本国内においてもアメリカの制度に相当するものが少しずつできつつある。また、世界的にも国連の『グローバルコンパクト』(地球的契約)をはじめ、各国で人権・労働・環境を重要な柱とする経営にかかわる制度や基準がつくられている。それは当然、海外で活動する日本企業にも適用されることになる。
そこで、日本においても企業倫理を確立する仕組みとしてECS2000を提唱している。これは、計画、運用、監査、見直しを循環させて企業倫理を進めていくものである。
計画の段階では、最高経営層が方針を示すことがポイントとなる。それをもとに倫理綱領や各種内規などを作成する。運用では、権限を与えられた部署が研修や職員へのアンケートなどの積極的な働きかけ、意識づけをする。監査では、具体的な問題点を明らかにすることが求められる。見直しでは、『第三者の視点』から考え直すことが重要である。そして、この循環を継続的に繰り返すことで実際の経営活動に適応したシステムが社内に構築されることになる。
今後、企業倫理が各企業において取り組まれることで、生き甲斐のある職場が形成され、社会的に信頼される企業となることが求められている。(坂東知博)