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これまでの施策
日本IBMでは、1986年から「イコール・オポチュニティ推進」のために専任組織を設置し、仕事と家庭を両立させる施策に取組んできた。
例えば、産前産後の休暇、育児時間、育児早退や育児休職制度(子どもが2歳になるまでとれ、期間中は無給だが社会保険料は会社が負担。1987年に制定し、1991年に改訂)、育児オプション勤務制度(仕事上の技術の陳腐化を防ぐために育児休職中のパートタイム勤務を制度化。給与・賞与は50%、60%を支給)、介護休職制度、ホームヘルパー制度などがある。実際に制度を利用しているのは、育児休暇が80人ほど、育児オプショナル勤務は10人ほど、介護休職は数人である。
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女性社員の状況
日本IBMでは、全社員21,331人のうち約14%が女性社員である。しかし、各国のIBMで比較するとアジア・パシフィックのなかでは一番低い。アメリカでは、3割程度が女性社員である。昇進については、日本IBMで女性の役員は一人、部長は一人、課長以上が140〜150人、主任以上が750人ほどである。男性と比較すると昇進比率は低い。その理由の一つはやめる比率が高く、若年層が多いということがある。
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第2期の施策
これまでの施策は「イコール・オポチュニティ」という男性社会のなかに女性をいかにあてはめていくのかという考え方であった。しかし、これからは個々の人間を活用していくことを考えている。例えば、世界の国で女性が社長をしている比率をみると、多くの国では2割を越えている。日本では統計はないが、いずれそのような状況になり、その会社は、女性を積極的に活用している会社と取り引きをするであろう。そこで、IBMのダイバーシティ(多様性)は、単なる理念だけではなく実利的な面も考えて実施している。
労働力に占める女性の比率をみても約40%になり、購買能力も上がっている。個人を対象とした販売において、「女性を活用している会社である」ということが購買にも結びついていく。また、会社としても女性のアイデアも取り入れられる柔軟性がなければ、これからの成長は見込めない。
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ウーマンズ・カウンシル
IBMでは、1997年アメリカで女性を十分に活かしている会社に対して与えられる賞を受けた。そのことを契機に、女性の活用を世界中のIBMに広げていくことになった。
日本IBMでは、1998年に「ウーマンズ・カウンシル」という委員会をつくり、女性の視点から社内のソフト面の検討とハード面の充実を5年の計画で考えている。この委員会では、課長職以上の女性10人が委員になり、人事が事務局を担っている。具体的には、海外の女性幹部職員を囲んでその方の経験を聞いたり、女性のフォーラムの開催や委員が地方の事業所で話をしている。
また、女性社員の定着率の向上、ワークライフバランス、メンタリングという3つのワーキンググループをつくった。そのなかのワークライフバランスでは、育児休暇は、保育園の入園時期の関係で1年では役に立たないなど、男性では気づかない意見が出された。ワーキンググループで出された意見を情報として女性社員に流していくことを考えている。そして、この活動を通じて社内に女性のネットワークができてきている。
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メンタリング・プログラム
これは上司(メンター)と部下(メンティー)との関係においてペナルティー・フリーで社員の成長を援助していくという、次世代育成のためのプログラムである。今年度は、特に部下を持って仕事をする女性の育成を目的に実施した。事業部長レベルをメンターとしてその事業部内で成長の見込める係長相当職以上を100人選び、実施してみた。その後のアンケートでは、7割が「よかった」との意見であったが、1割が「あまり効果がなかった」という結果がでている。
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IBMのプロフェッショナル
IBMの最終目的は、グローバル市場での成功である。しかし、それには長期の教育訓練で育成された専門職が必要である。即ち、IBMプロフェッショナル専門職という高い処遇を得られる職位である。
この制度を実施する前提としてスキルの取得がある。IBMでは総数21,582のスキル・カテゴリーを設定している。スキルに重軽はなく、自分が望む職種に必要なスキルの取得が求められる。また、各部署において必要なスキルと自己申告で出された各個人のスキル目標を話し合い、目標管理を行っている。このことで社員のキャリアアップを図ると共に、社員の評価にも活用している。 (坂東知博)