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企業部会・学習会報告
1998.7.28

米国三菱自動車のセクハラ訴訟和解をうけて

(報告)柏木宏(日本太平洋資料ネットワーク)

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 日本でも来年4月から、セクハラに対して事業主の責任として企業が取り組まなければならなくなった。米国三菱自動車のセクハラ訴訟が今年6月EEOCとの和解が成立したことを受けて、経過と課題について柏木宏さんから報告を受けた。以下、要約を載せる。

米国三菱セクハラ訴訟の経過

 1992年頃からEEOCに従業員の訴えがあり、1994年に民事訴訟が起った。その後、EEOCが調査の結果に基づいて1996年にクラスアクションを起こした。セクハラ訴訟の場合、被害者自身が訴え出ることが少なく、被害を受けた不特定多数のすべての従業員を代表して訴える方法をクラスアクションという。訴訟を起こした従業員の補償のみの場合、会社は訴えた従業員に対応するだけでとどまり、問題の本質的な解決にならないので、クラスアクションが認められた。

 米国三菱はEEOCに対して2000人を動員して抗議行動を起こした。そのことでアメリカの議会、市民団体からは批判の声が出された。そして、女性問題にとどまらず人種問題にも広がり、米国三菱は1997年1月にマイノリティ企業との関係改善策を発表した。最近のアメリカの人権団体の企業への取り組みは雇用だけでなく、マイノリティ企業との関係を増やしていくという経済的要求も増えてきている。

 1997年8月に29人の被害者が起こした民事訴訟について総額950万ドルといわれる和解金で和解が成立した。EEOCとは、1998年6月に総額3400万ドルで和解が成立した。この訴訟の被害者は、救済を求めてきた350人ほどで民事訴訟で和解した人は入っていない。しかし、最終的には400人ほどになるかも知れないといわれている。また、裁判所からは、問題を起こした企業に対して改善措置をとるよう命令が出され、監視委員が設けられる。
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セクシャルハラスメントとは

 セクシャルハラスメントには、報復型と環境型がある。報復型とは、性的な要求が受け入れられない場合、相手に雇用上の不利益を与えるもの。環境型とは、性的に不快な職場環境をつくることで、結果として特定の性の人々を職場から排除する傾向がある、または排除することである。

 経営責任について重要なポイントは、報復型に関しては、経営者が知らなくても、会社での権限を利用した行為であるので自動的に経営者が責任を負わなくてはいけない。環境型の場合は、経営者が環境型のセクハラが起きているのを知っていたが迅速な措置をとらなかった場合や、知るための社内における体制を作っていなかった場合に経営者が責任を負うことになる。

 1993年の判決では、被害者が普通の人間の心理として不快と感じることが職場で起こっており、経営者がそれを知っている、または知っているとみなされる場合には訴訟の対象になると判断している。最近では、不快感を与える環境には経営責任が問われる方向に拡大してきており、経営者はより敏感に対応することが求められている。

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米国三菱の問題

 この問題が大きくなった理由として、 1. 社内での対応やEEOCへの対応という解決のためのステップが事前にあったにも関わらず、有効に活用せずにEEOCへの抗議行動をとったこと。 2. 権威に依存した対応をとり、元労働長官のリン・マーチンを採用したこと。監視委員として元EEOCの委員や地元の女性団体が入ったが、それが重要なことだと理解されていなかった。 3. 本社の姿勢の不明確さがあり、正しいイニシアチブを本社がもつことが望まれる。そして経営者はさまざまな人権団体との緊張関係を意識した人権政策や社会的責任を推進する必要がある。 4. なによりもトップの理解が重要である。社長名でセクシャルハラスメントを許容しないことを明確な文書として示すような姿勢が、求められている。(坂東知博)