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日本太平洋資料ネットワークは、自分自身がアメリカにおいてマイノリティとして生活した体験から自らの権利を考え、他のマイノリティとも相互に取り組む必要性を感じたことから始まった。
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アメリカの人権政策の変化
アメリカでは1964年に公民権法ができるまで差別はある種当然であった。
公民権法には差別の禁止と差別の解消という二つの側面があり、単に差別を禁止するだけでなく同じスタートラインに立つためにアファーマティブ・アクション等により積極的に差別の解消が図られている。しかし80年代末の共和党政権から見直しの動きが出てきた。そこには「逆差別」の主張が70年代から出始め、割当制が特に白人男性を不利にしているという反発がある。
80年代からの議論で、アファーマティブ・アクションは過去にあった何らかの差別の解消を目的に目標値に近づけるというのであれば違憲とはいえない。努力した結果、マイノリティが少ないとしても問題とはいえない、という意見が一般的である。アファーマティブ・アクションへの批判の多くは割当制に対してされている。1996年カリフォルニア州では州政府の行う雇用、事業、教育のアファーマティブ・アクションが提案209として住民投票で禁止された。マイノリティから起こされた違憲訴訟でも合憲とされ、再審請求も棄却された。
クリントン政権になってからは不利な状況を持っている人への対策に変えながら結果としてマイノリティも対象となる、差別を解消する措置を残そうとしている。また、ヒューストンでアファーマティブ・アクション廃止の提案が出たが、企業が継続を求めて働きかけ廃案にした。好景気で雇用が拡大し、白人男性の不満が減少したことやそのため政治的な宣伝が減少した影響もある。
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企業の人権政策の変化
企業でも公民権法以前は人権無視が当たり前であった。公民権法後、運動や制度的な圧力が強くなり差別の是正に取り組み始めた。最近では多様性のある職場が経営基盤の強化やマイノリティ社会へのマーケティング等に効果があるとメリットに着目している。
しかし、深刻な人権問題が一部で継続しており、訴訟も起こっている。また零細な企業ほど事業契約等に関わって不利になることがあり廃止を訴えることが多い。
アファーマティブ・アクションの将来と企業
アメリカのアファーマティブ・アクションの今後は、揺り戻しを受け変化しながら継続されていく。その際、現在の保守的な判事の多い最高裁の動向が重要になってくる。しかし政治的には好景気の不満の少ない状況で廃止を訴えることの影響力は小さく、マイノリティの票を考えると廃止論は出にくいと考える。
日本では倫理や道徳として人権をみる傾向があり、そのことが企業の人権への取り組みを負担や経営と矛盾するものと感じさせている。アメリカでは訴訟での莫大な慰謝料や公共事業へ参入できない等の罰則、罰金が企業が法律を守る要因になっている。またそのような負のコストを抑えるだけでなく、世界的な戦略を立てる際に多様な人材を取り込むことが企業の競争力をつけることになるというプラスの発想がある。
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最後に
マイノリティにも所得格差が出て階層分化が生じてきている。
そこで所得等のより客観的で公正な誰もが適用できる要素を入れていくことで、白人男性も含めて結果的にマイノリティへの対策を講じていこうという考えが出てきている。そこにはマイノリティが下層へ押し込められることが社会全体としての損失という発想がある。また制度が硬直化し、目標値が割り当てになるとした時、揺り戻しにあってより普遍性の高いものになることがよいと考える。