企業の社会的責任
〜 グローバル化時代の新しい潮流
はじめに
グローバル化した社会において、現地生産や外国人投資家などの進出で企業が多様な価値を求められるようになった。したがって、市場もこうした社会と深く結びついていること=「市場社会」であることを十分理解すべきである。また、インターネットが活用され、市民活動が活性化するなかでNPOが企業を評価したり、協働で社会的な課題について取り組み始めた。そのなかで企業を評価する基準が財務的指標のみでなく、社会的指標も含むものとなってきた。
企業の社会的責任とは
「経営活動のプロセスに社会的公正性や環境への配慮などを組み込んでいくこと」と言える。その基準は、市場社会の企業に対する要請を反映しているので、国や地域、時代によって異なるが、同時にグローバル化の中で共通する部分もある。
例えば、アメリカでは1990年代になり、コミュニティーの問題に企業が関与することが多くなった。その背景には、1980年代にレーガン政権が「小さな政府」をとなえて緊縮財政を実施した結果、企業に期待される役割が大きくなった。そこで、都市におけるインナーシティの再開発について、社会貢献や事業を通して企業がそれぞれの地域においてコミュニティーの問題に関わるようになった。そこでは、限られた資源をどう使うか。メッセージをどう伝えるかという戦略性をもって実施されている。
わが国における問題点
日本では、社会貢献と社会的責任とが混同されて使われていることが多い。また、責任を段階的に考えていることが多い。本来、経営活動の関わって法的責任も社会的責任もすべて、同時に問われるべき問題である。
そして、戦略性ということが忌避されがちであるが、社会的責任において、企業もNPOも明確な戦略性をもつことで、相互に信頼関係をつくることが可能になる。
社会的評価システムの意義
最近、グローバルコンパクトやSA8000などの企業の社会的責任に関わる基準が作られてきている。そこではグローバルな市場社会の中で、どのような議論がされ、それぞれの国の歴史的背景の中で何が問われてきているかを理解することがポイントとなる。
SRI(社会的責任投資)についても、市場での企業価値や企業評価は、社会性を含むものに変わりつつある。アメリカの証券市場では、2001年度ではSRIが12%になっており、決して無視できないものになってきている。
企業やNPO等のさまざまな団体が企業の社会性について評価を下すようになっており、その動きが結果的に市場を通して、企業に社会的に責任ある活動を求めつつある。
そして、社会的責任と経済的成果は、二者択一ではない。
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