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同和対策審議会答申の意義と限界
「同対審」答申をみたとき「非常に立派だ」という思いと「これはひどい」という思いがあった。それは「同対審」答申は高い理念をもって、諮問に対して真摯な取り組みをしている。しかし、結語の「同和対策の方向」の部分では骨抜きにされていた。
「同対審」答申は、当時、さまざまな基本法が出された時代背景から当時の委員が基本法を想定して書いたことがうかがえる。
行政施策は主として結語に沿って行われてきた。しかし、行政の立場からみると抜け穴があった。結語に書かれていることは、第1は特別措置法の制定。第2が同和対策協議会の設置。第3が助成措置の強化、補助率を高率にする。第4が事業団の設立。第5が特別の融資。第6が総合計画の策定である。
第1、第3、第5については実施された。第2は、協議会は私的な諮問機関であり法律の根拠がない。第4は、昭和38年の第一次行政改革で事業団の新設の禁止が閣議決定されている。第6は、予算は単年度主義で各年で査定される。どれも簡単にできることしか書かれていない。この結果、後から振り返ると「同対法」、「地対法」では、現象的なものを事業として実施するにとどまっている。日本には差別の解消に向けた法体系や体制ができていないことが大きな問題である。
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心理的差別と実態的差別
これまでいわれてきた心理的差別、実態的差別は錯覚だったのではないか。世界的な共通の認識は、直接的差別か間接的差別かである。日本の心理的差別のほとんどは直接的差別にはいる。間接的差別は、気付かずになされていることが結果的にマイノリティーにとって不利になるようなことである。「同対審」答申の理念は今後も引き継ぎ、それ以外は洗い直して世界共通の認識にし、今後の総合的な施策に持っていく必要がある。
概念定義のあいまいさ
概念定義があいまいであると、マニュアルができず、理念が迷走することになる。そして、これまでは担当者の考え方によってぐらついてきた。例えば、「同対審」答申では基本的な考えとして法規制がいわれ、1972年同和対策協議会意見書にも積極的な措置をとることがいわれている。
しかし、1986年「地対協」基本問題検討部会報告書では「法規制は賛成しがたい」とされてしまった。
また、一般対策と特別対策という概念についても、これまで実態的差別といわれていたことは差別の結果であり、世界の考え方ではポジティブアクションで、短期、集中的に早期解決していかなくてはいけないものである。
ただ、予算措置について、一般施策ですべき道路や上下水道の整備を「同和予算」として計上したことが、エセ同和を蔓延させた一因となったと考える。
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企業への期待
企業には義務と責任がある。企業の社会的義務は、社会の構成要員として法律、規則を守ることである。
責任は、株主、従業員、消費者に対する責任。最近は公益活動参加の責任がいわれている。そして、差別の解消に取り組む責任もある。
これからの日本社会は、終身雇用制が崩れる。効率化と海外移転がすすみ、製造業の雇用吸収力が低下する一方で情報産業が大きく伸びてくる。そのことで仕事の内容が変化し、チームから個人へと労働のあり方が変化する。少子高齢化社会がすすむ。そして個人を大事にしない企業は人材が集まらなくなる。したがって、人権問題を経営理念の中心におくことが企業に求められている。
オポチュニティ2000
イギリスでは女性に対する雇用上の差別を解消するための企業による自主的な組織がある。企業を中心に警察などの行政機関も加わり、女性の昇進などに取り組む際にアドバイスなどを行っている。これは民間の人権活動における好例である。
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「人権教育のための国連10年」国内行動計画
国連が呼びかけているのは、あらゆる人々、社会構成組織のすべてを挙げて社会的弱者の人権に重点を置きつつ、ニーズを把握した上で、計画的に施策を実施する。しかも自らの日常生活のすべての面において行動し、実践することである。
啓発には3段階ある。ホップの段階は学習し、知識を深める。正しく認識し、理解すること。ステップは身近なものを再点検すること。ジャンプは社会的に活動し、人権という普遍的文化の構築することである。
官主導ではなく、企業が自ら行動する事が求められる。行政はそのための環境を整えなければならない。
同和問題の本質的な解決には、法律による差別の禁止が不可欠である。「同対審」答申の優れた理念は引き継ぎ、法律を遵守し、民主導で社会を変革する原動力になってほしい。