企業部会では、実際に社会的責任投資(SRI)「あすのはね」で企業の「市民社会貢献」についてスクリーニングを担当しているNPO「パブリックリソースセンター」の岸本幸子さんにSRIの流れと国内企業の現状についてご報告いただいた。
拡大するSRI
運用に関わっているSRI「あすのはね」では、雇用、環境、消費者対応、市民社会貢献の4つの柱について積極的な部分を評価している。このようにNPOがファンドの開発に関わるのは、これまでの財務評価だけでなく社会性を評価基準をおこなうことで、企業が社会貢献活動へ取り組む誘因となる。また、市民の側からすれば、金融市場をとおして企業に社会的責任をうながし、ゆるやかな社会変革をおこす力となる。
欧米においてSRIが拡がった背景には、2000年頃から英、独、オーストリア等で年金法等が改正され、年金の運用に関わる社会性について情報開示が義務づけられた。これは、2、30年後に受け取る年金は、その時代の社会の繁栄につながる企業へ投資されるべきという考えに立っている。また、環境レポートの作成の義務化(仏)やグリーンインベストメントへの税制改革(独、オランダ)がある。アメリカでは、401Kの3割がSRIへ投資している。
このようにSRIに対する需要が高まるなか、新たな商品開発がおこなわれ、年金を取り扱う会社が国をこえて企業情報を交換する等の国際的な動きが出始めている。
SRIの評価方法の発展
SRIの企業評価は、否定的な部分を評価するネガティブスクリーニング(第1世代)、肯定的な部分を評価するポジティブスクリーニング(第2世代)、社会的方針、環境方針、経済的方針を総合的に評価するトリプルボトムライン(第3世代)と展開してきた。そして、今後、NPO等の外部のステークホルダーズがスクリーニングに関わる(第4世代)へと向かっている。
パブリックリソースセンターでは、企業の社会的責任に関わる方針、政策、組織について評価している。海外では、ダイバーシティ(多様性)やサプライヤー(取引業者)そして投資先国を評価基準にしている場合もあるが、日本国内では、まだなじみが薄い。
社会貢献に限られた部分から見た日本企業
これまで評価してきたなかで、企業において社会貢献が十分確立していないと感じる。地域社会や社会の問題から地球環境までを社会貢献として考えているところは少ない。そして、ホームページ上において企業の理念や取り組みが十分公開されていない。情報公開は、企業評価のポイントであり、情報量が少ないことは低い点数となる。また、社会的責任を戦略的に考えている企業が少ない。自社の評価を高めるために、本業として社会貢献をおこない、評価システムの構築と計画、行動、監査のサイクル的な実施が必要である。
そして今後、多様性への配慮、国際化、社内体制の構築、環境報告書やサスナブル報告書の作成や第三者の意見を採り入れた監査が企業にとってポイントとなっていく。