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企業部会・学習会報告
2002年11月01日
日米企業の地域社会貢献活動

柏木 宏(日本太平洋資料ネットワーク事務局長)

はじめに

 1980年頃から多くの日本企業がアメリカで活動するようになった。しかし、日本企業の黒人や女性への差別が批判され、裁判が起こされたりした。また、企業の社会的責任をめぐる批判も高まり、JPRNでは、日本企業に対する教育活動をこれまですすめてきた。日本企業の社会貢献がすすまない理由は、日本社会での差別を放置したまま、海外でも同じことを繰り返していることがある。

企業の社会貢献

 アメリカにおける企業の社会貢献の定義は、‡@法律を守る‡A企業倫理の尊重‡Bフィランソロピーの推進である。フィランソロピーは、企業活動が地域社会(コミュニティ)に対してボランティアや貢献をしていくことである。

 アメリカでは、企業活動の社会的基盤整備をするという位置づけで戦略的な発想で社会貢献をすすめてきている。最近では、コーズマーケティングが注目され、社会的理念を考えたマーケティングということで、通常は特定のNPOとパートナーシップをくみ、NPOが企業の商品やサービスの利用を促すかわりに一定の寄付を行う。例えば、BMWは、一回の試乗につき一定の金額を乳ガンの治療をする団体へ寄付しているが、そのことで女性層へアピールしている。VISAは、カードの利用金額の一部を識字教育を行うNPOへ図書として寄付していた。アンケートの結果、利用者の多くが識字や教育への関心が高かったことによる。

CRA(地域再投資法)

 CRAは、1977年にできた連邦法で、地域の信用ニーズに公正に応えなさいという法律である。金融機関は、マイノリティや女性などにも信用調査に基づいて貸出しすることを求めている。担保主義により融資が受けられずに貧困から抜け出せず、それが差別になることを抑制するためにも返済能力を基本とした融資が行われている。

 また、NPOを活用して銀行が貸せる状態をつくるという発想をしている。NPOが、手続きや経費等の講習や事業支援、経営指導を行うことで低コストで効率的な地域の活性化が進めている。

コミュニティビジネス

 本業や自分たちの利益になる社会貢献活動で、小売業や電力会社、ガス会社などは、その地域をよくすることがビジネスを発展させることになるという認識をしている。

社会復帰法508条

 本来、障害者に対する社会参加を促し、差別を抑制するための法律であるが、昨年の改訂案では、IT製品の障害者対応が盛り込まれた。政府は、社会的に正しい事業を展開しなくてはいけないという考えから、政府がIT関連に関わるものを購入する際、製品やサービスが障害者対応であることをもとめている。しかし、企業にとっては国際市場における競争力を持つことになり、社会にとってもプラスになる。

おわりに

 企業の社会貢献、フィランソロピーを考えたとき、自分の利益を打ち出しながら行っているということがアメリカの特徴といえる。そのことが景気に大きく制約されない効果的な方法を考えだしている。そして、社会全体の購買力、労働力を向上させることで、経済システムを安定させることになる。しかし、それは企業とNPOとの共同作業によって初めて実現される。今後、日本における社会的貢献を考えた場合、いかにNPOを育成し、いかにNPOとパートナーシップを組んでいけるかが重要になってくる。また、企業の動きを促すために法律や制度も重要になる。