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03.08.11
部会・研究会活動 <企業部会>
 
企業部会・学習会報告
2003年6月30日
企業評価基準における社会的側面の調査動向について

(報告) 李 嘉永(部落解放・人権研究所)

  本報告では、既存の企業評価基準における社会的側面の調査動向と内容について報告された。日本においても、社会性の面から企業を評価する取り組みが広がっている。中でも人権の観点から注目されるのは、GRIのサステナビリティ・レポーティング・ガイドライン、経済同友会が策定した企業評価基準、そして朝日新聞文化財団による企業の社会貢献度調査の取り組みである。

  GRIの2002年ガイドラインとは、企業が公表する報告書作成に当り、記述することが望ましい項目を挙げているが、社会的指標では、人権についての指標が設定されている。ここでは、児童労働や強制・債務労働など、国際的に注目されている人権課題について特に言及するよう求めているが、その他の点では、人権についてのパフォーマンスや差別の撤廃についてその方針・組織・手順の記述を求めるにとどまる。

  経済同友会の評価基準では、企業の社会的責任に関する項目において、「仕組み」と「成果」とを項目上別個とし、ダイナミックな企業評価を可能にする。基準の内容としては、雇用の側面で機会均等、差別禁止やセクハラ防止などの人権配慮についての取り組みを挙げているが、成果としては、女性・外国人の管理職・役員の比率を述べることとし、障害者雇用を例外として、必ずしも就職困難者の雇用全般に広がっていない。また社会の側面では、社会貢献・NGOとの協働について人権的視点を盛り込む可能性を秘めてはいるものの、人権への配慮を直接想定しているのは海外事業展開の場合に限っている。

  この点でもっとも立ち入って評価を行っているのは朝日文化財団の社会貢献度調査である。男女平等や障害者雇用のみならず、外国人の雇用率や、フェアな職場における社員の個の尊重など、広範な人権課題について調査し、しかも数値化に取り組んでいる。その意味では最も人権に踏み込んだ指標であるといえる。但し、この点については、注意すべき点がある。つまり前二者においては、今後の発展を見越して、当初のハードルを低く設定し、企業の参加を容易にする配慮が行われている。この点をどのように捉えるか、議論を要するように思われる。

(文責・李 嘉永)