調査研究

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04.03.06
部会・研究会活動 <企業部会>
 
企業部会・学習会報告
2004年1月27日
企業の社会的責任と人権(3)

資生堂の社会貢献活動

岡内 伸二((株)資生堂人事部課長人権啓発G)
亥野 蔦江(資生堂販売(株)大阪支社企画統括部お客様担任)

資生堂の社会貢献活動

 資生堂は、「美しい生活文化の創造」を企業理念としており、企業活動と社会活動とを両輪と考え、社会活動についても積極的に推進している。具体的には、経常利益の3%を社会活動全般に充てている。現名誉会長の福原義春は、「社会貢献活動の費用は原価である」と捉えている。社会貢献活動が直接利益を生むものではないにせよ、いずれ巡りめぐって戻ってくるのだという理念を表している。

 具体的な取り組みとしては、「メセナ活動」、「学術支援活動」、「サクセスフル・エイジング活動」、そして「福祉・地域社会活動」の4領域がある。第一のメセナ活動は、若手アーティストに作品発表の場を提供し、また作家支援プログラムを行っている。学術支援としては、皮膚科学、生活科学に関連する最先端の研究を支援している。サクセスフル・エイジングの取り組みとしては、少人数制の講座やセミナーを開催し、また、「身だしなみ講座」もその一環として取り組んでいる。福祉・地域社会活動においては、制度的に社員の社会活動を支援している。社員の社会活動を出勤扱いにする「ソーシャル・スタディーズ・デイ」、草の根的な活動を表彰する「社会活動賞」、ボランティア活動に見合う量の商品を福祉施設に提供する「商品マッチングギフト」など、広く展開している。

身だしなみ講座の取り組み

 身だしなみ講座は、当初高校卒業予定者に、身だしなみとしての化粧方法などを知ってもらうための「整容講座」として始まった。その後1949年頃から高齢者や障害者を対象に行うようになり、1975年に「身だしなみ講座」として全社的な活動に拡大した。2002年度には1,888件、36,635人が受講された。

 「身だしなみ講座」は、1975年に、岩手県盛岡市の特別養護老人ホームから開始された。ここでは、自ら進んで化粧を行い、気持ちが前向きになり、リハビリを積極的に行うようになった。互いに助け合う気持ちを持ち始めるようにもなった。徳島県の病院では、90%の患者の表情が変化し、35%が身だしなみに気を配るようになった。また、化粧品識別のための点字シールや、点字の美容テキストなどを制作するなどの配慮をしている。受講者の増加に伴い、元社員の希望者に協力してもらう「ビューティーボランティア制度」を設置した。受講者のみならず、参加する社員自身が、この取り組みを通じて充実感を感じ、活動が変わってくるという効果も見受けられる。

身だしなみ講座の実践

 実際に取り組む際に、第一の目標としているのは、参加者に楽しんでもらうことである。そのために、参加者を名前でお呼びしている。また、リハビリの意味からも、感触を覚えて帰ってもらうために、参加者自身に手・指を動かして頂いている。参加者が高齢者の場合、顔の筋肉が若い頃とは状態が異なってくるので、その状態に見合ったメイクのしかたを提案している。

 講座の参加者は、最初はたいてい消極的だが、講座が進み、きれいにメイクができてくると、とてもお喜びになる。最初は仲のいい同士でしか話さなかった人も、テーブル越しに「その口紅ええわあ」といった声をかけあうようになり、非常に和やかな雰囲気になっていく。

 老人ホームやデイサービスセンターでのセミナーでは、高齢者にとって長時間座るのが苦痛なので、マッサージを取り入れ、歌を歌いながら手を動かしている。そうすると、腕の筋力が衰えた方でも、少しだけ歌に合わせて手を動かすようになった。職員の方は、「化粧療法だ」と驚いておられた。このように、化粧をすることで、誰かと話したくなる、社会に参加していきたくなるような気持ちを持ってもらえたら、と考えている。

 また、障害者の方にも、例えば就職活動のためのガイダンスの一環として、面接の際に好感を持たれるメイクについてガイダンスを行った。その際には、手話通訳のために余り専門的な用語を使わないなどの配慮をしている。障害者の方の場合にも、できる限りご自身の手で覚えてもらうよう心がけている。視覚障害をお持ちの方にもわかりやすいように、使いやすい道具(コットンや紅筆など)を用いている。

(文責・李 嘉永)