〈第1報告〉
第1章では、CSR報告書の意義と近年の動向を述べているが、CSR報告書の意義としては、CSR活動それ自体としてステークホルダーと対話することが求められており、そのツールとして機能していることを指摘している。環境省は、このような報告書の機能として、(1)情報開示機能、(2)情報提供機能、(3)CSR活動促進機能、(4)方針等の策定・見直し機能、(5)意義付け・活動促進機能を挙げている。つまり、CSR報告書をまとめること自体がCSRを促進することにも繋がるという趣旨である。近年の動向として、グローバル・コンパクトでも活動報告にこれらのCSR報告書を活用する方向にあること、各種ガイドラインが改訂され、人権問題もより充実しつつあることなどを紹介している。
第2章では、実際の調査結果を「全般的傾向」と「個別課題」に分けて、主に2005年度版の傾向と比較検討している。全般的な傾向としては、CSRを報告書タイトルに採用する企業が大幅に増加していること、他方で内容がタイトルに追いついていない事例がみられること、課題の記載が依然として低調であること、サプライチェーン・マネジメントにおける人権尊重がやや増加していることなどが挙げられる。
個別課題としては、人権尊重の体制作りや公正採用のメッセージはやや増加しているが、就職困難者積極採用や人事評価基準での人権の視点に関する記載は皆無であった。人権問題相談窓口や障害者雇用率の記載は増加しているが、非正社員の雇用形態転換の機会についての記載は稀である。
なお、人権・同和問題企業連絡会加盟企業の報告書の特徴を別途まとめているが、これらの企業は、一般的な傾向に比べて、特に人権の体制整備、人権啓発、人権相談等で優位性が見られるが、記載が無い報告書も見られる。これは、実際の取り組みがCSR報告書に反映されていないともいえる。他方で、同企連企業らしく人権問題について踏み込んだ記載を行っている事例がある。
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