この度、「企業倫理と人権・部落問題」についての調査結果がこのように発刊されることになった。これからの企業における人権問題の取り組みに、従来と異なる方向から考えていただく一助になることを期待したい。
また今回、企業倫理関係資料のご提供にご協力くださった四社に感謝申し上げる次第である。
人権問題は、私達人類の崇高な理念として、大切にしていかなければならない永遠のテーマである。また私達一人一人の課題でもある。
企業社会とまでいわれる今日、企業でも人権問題が重要な課題として取り組まれてこそ、人権問題の広がりが実感されるものと考えている。
ところが、依然として企業の差別事件や不祥事が後を絶たない。これまで、その原因として、日本の企業について、規模と効率を中心に追ってきたからだとか、経営者にはスキルはあってもフィロソフィーがない、などと言われてきた。
日本経団連でも、企業行動憲章を制定するなどして経営者の自覚を求めてきているが、依然として刑事告発を受ける事件まで生じている。
社会の企業にむける監視の目も厳しくなってきている。
企業は自らの社会性を問うべく、企業行動を律する企業倫理の策定を求めらる時代になってきた。
今こそ、企業の人権問題を疎んできた古い体質を企業倫理策定を通じて変革していく絶好の機会と考えたい。
企業倫理の策定がたんに企業のリスク管理としてではなく、国際的レベルで人権について企業倫理の中にしっかり組み込むことが、企業が大きく発展するために大切なことであると考える。
最後になったが、この調査を始めるにあたって、貴重なアドバイスやご協力をいただいた高 巌(麗澤大学)教授に深く感謝する次第である。