今回の調査は、近年クローズアップされてきている「企業倫理」の内容や取組みと人権・部落問題の取組みにどのような「相関性」があるのかを少しでも明らかにできればという目的で行った。
すなわち、これまで企業は主として株主に対して説明責任を負うという考え方できたが、企業活動がグローバル化し多角化していくなかで、利害関係者は株主だけでなく消費者、従業員、環境、地域、などさまざまな方面に及ぶにいたっている。「企業市民」といわれる所以である。こうした関係者に対し、企業(人)としての法律遵守にとどまらない行動規範を定めたものが「企業倫理」であり、そのためのシステムづくりも進んできている。
一方、部落問題は、企業にとって、歴史的背景の中で社会的経済的文化的なさまざまな課題が存在している同和地区という点では「地域(コミュニティ)問題」であり、また部落出身者の雇用の平等やプライバシー保護などという点では「従業員問題」であり、そして人権問題の原点でもあるといえる。
したがって部落問題は、企業倫理の中においても明確な位置付けが当然必要とされる課題であり、さらには規定上のことだけでなく、実際のそれぞれの取組みの中でどのような関連性が生まれているのかも重要な点である。以上のような問題意識から調査は始められた。
具体的には、協力の御承諾をいただいたNEC、三菱地所、住友電気工業、富士火災海上保険の4社の事例研究を行うこととした。2000〜01年度にかけて、各社の企業倫理担当者と人権教育担当者の方々にインタビューをさせていただいたり、資料提供をしていただき、それをもとに、研究所の中村清二と坂東知博が報告書をまとめていった。