調査研究

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2006.02.02
部会・研究会活動 <企業部会>
 
企業における人権尊重の取り組みの現状
―70社の事例より―
発刊にあたって

部落解放・人権研究所
企業部会長 田中 昭紘
「一人の機知・万人の知恵」という言葉があります。この言葉はロード・ラッセルという人が、ことわざ、名言を評して言われたとされていますが,良き文化、慣習を後世に伝えるためには多くの人達の共感、同意が必要であるという意味で使われています。

私が大阪同和・人権問題企業連絡会(以下、大阪同企連)の理事長を仰せ付かっておりました時に,経済界の会合で、企業の社会的責任(CSR)が話題となり、大阪同企連として、この問題について「どんな取り組みをされているのですか」と聞かれたのが切っ掛けとなりました。会員各社では、それぞれに取り組みが行われているであろうが、大阪同企連としても企業連絡会として、今後、課題テーマとして展開させていかなければならない重要な案件と判断をしましたが、専門的な知識もないことから、平素、ご指導いただいております部落解放・人権研究所に相談致しましたところ、人権の世界的な潮流のなか企業にとって、これからは避けて通れない問題であるから、共同で取り組んでいきましょうと即答いただき、すぐに具体的なすすめ方について打ち合わせをさせていただき、メンバーの選出、スケジュール化したのです。そして、2003年から企業の社会的責任(CSR)についての調査・研究が始まったのです。言わずもがな、部落解放・人権研究所の「企業部会」では2001年から、定期的に、継続的に企業の社会的責任(CSR)についての学習会を実施していたのです。

以降、数回にわたる会議・打ち合わせ、一方、企業に調査・ヒアリングを依頼し、今般、その成果を「報告書」として紹介することが出来るようになったのです。時代のニーズに鑑み、広く活用していただくことを期待します。

今日、企業の社会的責任(CSR)は、企業が法的責任や経済的責任だけではなく、社会の健全な発展に対する責任を果たすことであり、社会において活動を続けていくため、経済・社会・環境面での結果を総合的に高めていくための取り組みが、強く求められるようになってきたのです。

  1. 人類の持続可能な発展を求める国際的な潮流と国境を越えたコミュニケーションの拡大 
  2. 企業のグローバル化、多国籍化の進展
  3. 相次ぐ企業不祥事の発生

等々の事情から、企業のボーダレス化にともない、企業をとりまくステークホルダーも拡大し、多様化、多面化、複雑化してきていることを踏まえて、企業の社会的責任(CSR)への取り組みが急テンポで進展してきている現状下にあります。

 折りしも、企業の社会的責任(CSR)が国際標準化機構(ISO)の規格にしていく動きが、2001年度より国際的な場で議論が始まり、このまま推移しますと2008年には国際規格として発効されることが報じられており、少子高齢化時代がもたらす様々な問題点と共に、経済界にあって避けて通れない重要な課題として取り組みが行われるようになってきています。

 我が国にあっては、同和問題の一日も早い解決をめざして真摯に取り組み出したのが、1975年の「部落地名総鑑」差別図書の発覚であり、それ以降、逐一、「人権問題」への取り組みが始まり、日々深化し、そこで得た体験、経験がさまざまな「人権」への取り組みへと進展し、今日、企業活動の重要な柱となりつつあります。しっかり、地に足をつけ、人権を機軸とした経営活動が求められる時代を迎えています。企業の社会的責任(CSR)を発揮できない企業は存続できないところにまできているのです。

 その暁に、人類が永年にわたって欣求してきた「人権文化の灯」が点ることを期待したいと思います。

 最後に、「報告書」の出版にあたり、心からなるご協力をいただいた大阪同企連の皆さまに感謝申し上げます。

以上

2005年   錦秋の頃