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国際人権部会・学習会報告
2002年9月5日
南アジアの人権 〜 バングラデシュの場合

(報告) イフテカル・ウディン・チョードリー(バングラデシュ・チッタゴン大学社会学部教授)


日本で博士号を取得し、日本の大学でも教えていた経験をお持ちのチョードリー先生から日本語で報告をいただいた。

以下にその要旨を紹介する。なお、参加者から出された質問にも詳細な回答をいただいたが、紙面の関係で割愛する。

パキスタンからの独立と言葉

南アジアとして分類されるのは、インド、パキスタン、バングラデュ、ネパール、スリランカ、モルディブ、ブータンの7ケ国である。

インドとパキスタンは1947年にイギリスの植民地から独立を果たした。それ以降、1971年の独立まで、バングラデシュはパキスタンの一部だった。独立前のパキスタンでは、西パキスタン(現在のパキスタン)の人物が支配者層を占め、東パキスタン(現在のバングラデシュ)の生産物も西に持っていかれるなど、東パキスタンは一国の内部に存在する植民地のような状態に置かれていた。

独立までのおよそ4半世紀、バングラデシュは様々な抵抗運動を行った。1952年には、西パキスタンで話されているウルドゥー語ではなく、バングラデシュ語が自分たちの国語だという運動が始まった。パキスタンとバングラデシュはインドを挟んで1000km離れており、文化や言語が異なる。約10ヶ月に及ぶ独立戦争の末に、バングラデュの独立は達成された。

経済的貧困と人権

南アジアの人口はざっと14億と考えられる。インドの人口が10億を超えており、パキスタン、バングラデュの人口は共に1億人以上である。

この地域の人権課題を考えるとき、貧困は無視できない。1日の食事が1回だけという人が40%も存在し、約5%の上流階級と社会の底辺層の人々との貧富の格差は拡大している。

具体的にみると、5歳未満の幼児死亡率が過去30年間で半減したという前進がみられる一方で、300万人以上の子どもたちが5歳になる前に亡くなっているという現実がある。

バングラデュの人権課題:女性の地位の低さ

バングラデシュの人口に見られる男女比は、世界のトレンドと逆になっている。

つまり、女性100人に対して男性が104人の比率で、このことから女性の地位の低さがわかる。男なら財産になるという考えが強く、男の子が好まれる傾向はイスラム教徒、ヒンドゥー教徒の両者に共通している。

平均婚姻年齢は男性27歳に対し、女性は20歳である。地方では12〜14歳で女の子が結婚していることもある。

イスラム教では、女性は出産後40日間不浄とされ、皆と同じ所で眠ることを許されない。財産の分与上の女性差別もある。夫が亡くなった時の遺産配分で、妻の相続分は2割、娘には息子の2分の1しか与えられない。残りは親戚などが分ける。

宗教を理由にした人権侵害

バングラデシュの現政権は、原理主義、軍人政権から出てきた政党によって作られた政権で、選挙の時ヒンドゥー教徒は自分たちの陣営を応援しなかったとの認識を持っており、ヒンドゥー教徒に対する暴力行為にまで発展した。

バングラデシュではイスラム教徒が86%なのに対してヒンドゥー教徒は12%である。

ヒンドゥー教徒とイスラム教徒との衝突は、インドだけでなく、バングラデュでも起こっており最近特に問題になっている。