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部会・研究会活動 <国際人権部会>
 
国際人権部会・学習会報告
1997年3月1日
フィリピンの地域開発とマイノリティ
〜フィリピン政府の視点から

アルマ・エバンジェリスタ
(フィリピン大統領府和平プロセス担当大統領顧問室長)

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 去る3月31日、日本ユネスコ協会連盟、帝塚山学院大学国際理解研究所、アジア太平洋人権情報センター、部落解放研究所の4者共催で国際人権部会が開催された。以下、その要旨を報告する。(文責:事務局)


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 フィリピンでは現在、「フィリピン2000年」をスローガンに、21世紀までに新興工業国への仲間入りを目指した改革を進めており、そのための政策の柱が包括的和平プロセス。92年に大統領に就任したラモス大統領は、和平と国民的和解を実現するため(※)、「国家統一委員会」を創設、その答申に基づき93年に「和平プロセス担当大統領顧問室」が設けられた。


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 具体的には

‡@反政府勢力が生まれる根本原因の社会、経済、政治的改革、

‡A人々の和平への参加、

‡B反政府ゲリラとの和平交渉、

‡C元ゲリラ兵士および紛争犠牲者の社会統合、

‡D一般市民の保護と紛争地域の非暴力化、

‡E平和教育の推進、

などを重点課題として、公正で平等な社会の建設が図られている。


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 この改革は、社会の基礎をなす農民、漁民、先住民、都市貧民、未組織労働者、女性、障害者など不利益を被っている人々の生活水準の向上、持続可能な発展をターゲットとした分野別と、貧困20州を主要ターゲットとする地理別の2面展開だ。農民には農地改革、漁民には漁業改革と海洋資源の保護、先住民には先祖伝来の土地に対する権利を保障、女性には「レイプ取締法」の改正といった政策が進行、あるいは審議されている。現在、そうした改革に不可欠な法案が、国会で承認されるよう議員に対する強力な働きかけを必要としているのである。

(※事務局注:同国では長年、「フィリピン共産党」(NDF-CPP-NPA)、ミンダナオ島に拠点を置く「モロ民族解放戦線」(MNLF)を始めとするイスラム諸勢力、国軍反乱派などによる武装闘争を生み出す経済的停滞や社会的不平等が存在し、そのことから国軍との間で内戦状態となり、社会発展が阻害されていたという背景がある)