調査研究

各種部会・研究会の活動内容や部落問題・人権問題に関する最新の調査データ、研究論文などを紹介します。

Home調査・研究部会・研究会活動国際人権部会 > 学習会報告
部会・研究会活動 <国際人権部会>
 
国際人権部会・学習会報告
2002年11月25日
スィンティ・ロマの現状をめぐる人権の課題

(報告) ジャック・デルフェルド(ドイツ・スィンティ・ロマ中央委員会副委員長)


 スィンティ・ロマが民族的少数者として認められ、差別から保護されるために活動を続けているデルフェルドさんから報告をいただいた。以下にその要旨を紹介する。

スィンティ・ロマとは

 現在、世界中に約1000万人と推定されるスィンティ・ロマの人々は、ナチスの支配の下でホロコーストの犠牲になるなど歴史的に様々な差別・抑圧を受けてきた。今日においても、ヨーロッパ全域で社会制度の枠外に置かれ、虐殺、迫害を受けている。

 彼/彼女らは、8世紀から12世紀の間にインドのパンジャブからヨーロッパに移住し、いくつかの国では古くからの定住者として歴史的にも重要な位置を占めてきた。彼/彼女らは、自身が定住している国家の言語とともに、彼ら固有の言語を使用しており、これがアイデンティティ形成の中核をなしている。

 なお、彼らは、「ツィゴイナー/ジプシー」と呼ばれることを好まない。なぜなら、このような呼び名は、しばしば「流浪のならず者」を連想させるからである。

ドイツ・ヨーロッパ各国におけるスィンティ・ロマの今日的状況

 1989年の社会主義諸国の政治的変動以降、ヨーロッパにおけるスィンティ・ロマを取り巻く状況は悪化している。ただし、東西ヨーロッパにおいてその様相は異なる。東ヨーロッパにおいては、社会主義国家の崩壊に伴う国内経済の一層の悪化によって、ほとんどのロマの人々が劣悪な生活条件や労働条件等にさらされ、人種差別的暴力の犠牲となっている。他方、西ヨーロッパにおいては、スィンティ・ロマに対する偏見から就職や結婚等において社会的な差別を受けている。

ドイツでのこれからの課題 〜 マイノリティの法的地位

 ドイツは、1995年に国内の7万人のロマを国内少数者として公式に認めたが、EUが2000年に承認した包括的な反差別法を採択しておらず、スィンティ・ロマに対する法的保護は未だ不十分と言わざるを得ない。ドイツ・スィンティ・ロマ中央委員会は、スィンティ・ロマの法的地位の確立に向けて、ドイツ連邦政府・州政府に対して効果的な立法を行うよう要求している。