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国際人権部会・学習会報告
1998年7月29日
アジア・太平洋における人権教育

(報告)ジェファーソン・プランティリア(アジア・太平洋人権情報センター研究員)

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 アジア・太平洋地域における人権教育の形成は、同地域の歴史的過程と密接に関わっている。第1段階は、1950年代から80年代末にかけての時期である。多くの国で軍人出身者などによる独裁政権のもと、大規模な人権侵害が行われた。そのなかから、人権を主張するNGOが次々と誕生し、人権教育の必要性や理念が出てきたのである。人権教育は上から押しつけられるものではなく、人々の中から作られるものという考えが唱えられ、参加型学習もNGOの側から生まれた。

 次が92年から95年にかけての時期で、リオの環境サミットから、ウイーンでの世界人権会議、コペンハーゲンでの社会発展サミットに至る様々な人権に関する国際会議が、国連のイニシアチブで開かれた。その結果、人権が基本的な認識の土台になってきた。同時に、NGOが国際会議でさらに活躍するようになったのもこの時期である。


 また、冷静構造が終結した80年代末から現在にかけて、グローバル化が進むなか、人権についてというよりはむしろ経済活動についてではあるが、それまで敵対関係にあった国どうしが同じテーブルにつき、法による統治を話し合うようになってきた。同時に、各国ではグローバル化に対応していくためには、人権状況も含めていかに改革していくかについて議論されるようになってきた。

 いま、人権教育を中心的に実行している主体は、NGO、各国政府による人権機関、学校の3者である。NGOは、直面している現実の問題を見据えながら草の根レベルの人々を対象に、人権の伸長のための行動へと結びつけていくような教育を指向している。NGOはかつて、政府の人権機関は、国内の人権侵害を覆い隠すものだと批判的に見ていた。しかし、一方である政府が人権侵害をしていたとしても、他方でその国の人権機関は政府職員、教師、一般大衆を対象に、NGOにはない資源と政府部内における影響力を使って人権教育を展開してきたという現実がある。

 学校においては、かつて人権を教えることはあまりにも政治的すぎると敬遠されがちだったが、近年人権に対する解釈が市民的、政治的権利だけでなくもっと広がり、また世界的な認識も高まったおかげで、学校でも人権が抵抗なく教えられるようになってきた。


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 アジア・太平洋地域における人権教育の最近の傾向は、NGOや政府組織・人権機関などの相互のネットワーク化が進んでいることがあげられる。また、子ども、女性、環境など人権に対する切り口が広がる中で、人権という考えが社会の主流になりつつあり、人権の伸長を制度化する流れが出てきた。

 この地域の政府間では、人権教育の分野で技術協力しようとする合意ができている。最終的には世界の他の地域にあるような地域人権機構をつくる必要があるが、各国政府は時期尚早だとしている。人権教育の推進はその実現に向けた第一歩である。そうしたなか、国連やNGOの役割、そしてネットワーク化がさらに重要になっている。

(藤本伸樹)