調査研究

各種部会・研究会の活動内容や部落問題・人権問題に関する最新の調査データ、研究論文などを紹介します。

Home調査・研究部会・研究会活動国際人権部会 > 学習会報告
部会・研究会活動 <国際人権部会>
 
国際人権部会・学習会報告
1998年12月22日
国連規約人権委員会での第4回日本政府報告書の審議報告と日本の課題

(報告)岡本雅享(在日韓国人問題 研究所(RAIK)協力研究員)

---------------------------------------------------------------------------

 「市民的・政治的権利に関する国際規約」(自由権規約)の実施を監視する国連規約人権委員会は、ジュネーブの国連欧州本部で98年10月に日本政府の第4回報告書を審議し、11月に29項目の「主要な懸念事項と勧告」を盛り込んだ最終見解を採択した。

 日本政府は、6省庁から26人の代表を送ってこの審議に臨んだ一方、NGOは政府報告書の問題点などを指摘した22団体からのカウンターレポートを事前に提出すると共に、延べ60人が傍聴やロビー活動のためにジュネーブに行った。

 NGO側では、多人数がジュネーブに行ったもののその活動の調整不足が指摘された第3回報告書の審議時の93年の反省をふまえ、今回は国際人権NGOネットワーク(東京を中心に活動)が団体間の調整を図った。国内では98年9月にカウンターレポートを提出する団体の情報交換の場を持つと共に、NGOと政府との合同会見を企画した。ジュネーブでは、審議を前に日本のNGOが合同で規約人権委員会の委員に対して昼食時などを利用して状況説明を効率的に展開した。

 その結果、ロビー活動は成功し、前回審議後に同委員会が出した勧告がほとんど実施されていないことへの懸念で始まる最終見解が導かれたのである。

 しかし規約人権委員会は法廷ではないことから、規約違反と指摘したとしても罰則があるわけではない。その見解が国内の行政、立法、司法などで反映されなければ、法改正や施策の是正にはつながらないのである。誰も言わなければ、問題が棚上げになるだけのことだ。NGO側では、日本の人権状況の国内での議論と国際基準とのずれを洗い出し、その意味を広く伝えるとともに、必要なものは法改正の議論を積極的に進めていくことが必要だ。

 そうしたなか、98年12月3日、国会議員有志の主催で第4回審議のフォローアップ会議が開かれ、国会議員14人、政府とNGOの代表がそれぞれ約30人ずつ参加した。最終見解を国内に反映させていくためのこうした場を設定していくことが必要だ。

 今回のロビー活動を通じて感じたことだが、日本のNGOのカウンターレポートは数が多すぎ、情報も重なっている部分が多々あった。また、日本のNGOはジュネーブにロビー活動に行くこともできるが、他のアジアのNGOは資金的にそうもいかない状況であり、これらは今後の検討課題である。

(藤本伸樹)

※事務局注:部落解放・人権研究所もカウンターレポート(日本語版は『国際人権規約が問う日本の差別』)を作成し、規約人権委員会に提出しました。実費頒価でおわけしています。