調査研究

各種部会・研究会の活動内容や部落問題・人権問題に関する最新の調査データ、研究論文などを紹介します。

Home調査・研究部会・研究会活動国際人権部会 > 学習会報告
部会・研究会活動 <国際人権部会>
 
国際人権部会・学習会報告
2003年3月19日
国際人権規約とマイノリティの権利

金東勲(龍谷大学教授)

 金 東勲さんが、3月末で龍谷大学の教授を退職されるのに先立ち、国際人権部会を開催した。(ヒューライツ大阪の国際人権研究会との共催)前国際人権部会長の金 東勲さんは、「人権の課題に引退や定年はない」と話されており、今後も、NGO等の様々な組織との関わりや研究活動を継続される。報告内容を、第27条の意義とそれによって保障される権利の性質に焦点を絞って紹介する。

自由権規約第27条の意義

「種族的(ethnic)、宗教的又は言語的少数民族が存在する国において、当該少数民族に属する者は、その集団の他の構成員とともに自己の文化を享有し、自己の宗教を信仰しかつ実践し又は自己の言語を使用する権利を否定されない。」

 1966年に採択され、1976年に発効した自由権規約の第27条(上記)の意義を、金さんは、「権利の享有者として、マイノリティが明示的に出された、歴史上初めての法律文書」であり、「この規定により、マイノリティと国家の間に権利・義務関係ができた」と解説された。

第27条によって保障される権利の性質

 締約国における自由権規約の実施状況の審査を受け持つ規約人権委員会が採択した、第27条に対する見解(一般的意見23号)と個人通報によって訴えられたケースの検討を通じて、規約第27条が保障している権利の性質について、金さんから重要な側面の指摘があった。

第一に、「条文には、アイデンティティという語がないものの、一般的意見23号には、“第27条で規定される権利の保護は、マイノリティの文化的、宗教的および社会的アイデンティティの保持と継続的発展を確保し、社会構造全体を豊かにすることを指向する”と示されていることから、民族教育や文化活動に関する権利など、アイデンティティの保持と発展に必要なすべての権利が包括されるものと理解できる。そして、同意見中に、“締約国は、第27条で規定される権利の行使を十分に保障する義務を負い、そのために講じた施策を報告書に含めなければならない”と述べられていることから、締約国には積極的な施策を講じることが求められていると捉えることができる」との、金さんの見解が話された。

また、条文中の“集団の他の構成員とともに”が明示するように、マイノリティの権利は、基本的に集団の権利であり、“自己の集団に帰属する権利”が前提として存在することが指摘された。さらに、一般的意見の中で、“特定文化の享有は、領土およびその資源と密接に結合している生活様式の中に認められることがある。とくにマイノリティである先住民共同体の構成員の場合は確実である”と述べられていることが紹介された。

以上の金さんの指摘を総合すれば、第27条で保障されている権利は包括的であり、その保障に義務を負う締約国には、個人のみならず、その個人が帰属する集団とその生活様式を念頭においた積極的な施策の実施が求められる、と言えるのではないかと私は理解した。

(小西 裕美子)