1984年の人権デーに創立された台湾人権促進会(台権会)は今年20周年を迎える。その歴史を前半10年と後半10年の2期に分けて説明する。
第1期(前半10年)の台権会は、台湾政治の民主化要求運動と深い関係を持つ。市民運動団体の制約を意図した法律の影響を受け、台権会は非合法団体として発足した。人権を語ることがタブー視され、人権を求める活動が違法とされた状況下では、人権をテーマにした座談会の開催など、限定的な活動しかできなかった。政治の世界では、人権問題を取り上げてきたのが国民党以外の勢力であったことに関係して、民進党(現在の与党)の関係者が台権会の執行委員や会員を一定の割合で占めていた。しかし、台権会の活動と政治の分離が必要だと考えられ、選挙には介入しない声明を出している。
1987年に戒厳令が解除されると、台権会の活動形態は街頭でのデモや監獄訪問などに拡大した。具体的には、政治的権利の獲得、政治犯の釈放、政治的迫害を受けて国外に避難していた人々が台湾に戻れるようにすること、言論の自由の保障を求めて活動が展開された。
第2期(1994年-今日)の台権会は、人権国家建設を目標に、民主化が達成された社会において全方位的活動を行ってきた。1992年に国会が全面的に改選され、1994年に台北市や高雄市で市長が直接選挙で選出されたことをもって、民主化はほぼ達成されたと考えられている。当時の代表が学生、専門家、弁護士の積極的な関与を推進した結果、1995年に政府に認められた合法組織となった。
現在行っている活動の1つに、インターン計画がある。これは、学生に人権への理解を深めてもらい、さらには台権会の活動を担ってもらうことをめざして、1998年に開始された。インターン生の対象が法学部の学生に限られ、欧州の団体の助成を得て始まったこの事業は、対象を社会学や政治学を専攻する学生へと拡大しつつ、海外のNGOや大学との協力も築いて今日に至る。また、大学院生が人権の理論、制度、歴史、運動といったテーマでの論文を作成することを支援したり、夏期大学生研修会を実施したりしている。
その他、人権を社会に浸透させていくために、教師やマスメディアを対象にした教育・啓発活動や、CD製作も行っている。毎年人権デーの前日に記者会見を行い、NGOから受け付けた資料を基に選んだ、台湾人権10大ニュースを発表し、関連するビデオを見せたりしている。CDは、人権を伝える上での、よりソフトな媒体として活用しており、人権をテーマにした音楽を収録した。
制度の整備や政策提言の分野では、弁護士ホットラインの設置(メディアによる、容疑者の段階での犯人視報道への対策)、裁判官を民間が監視する組織の設立(人権感覚をもった最高裁判所裁判官の選出に有効)、個人情報保護連盟の結成、国内人権機関組織法草案の作成などに取り組んできた。1999年に女性、子ども、障害者の権利に取り組む組織や労働組合によびかけ、22の団体で国内人権機関推進連盟を作って検討を重ね、翌年に草案を発表したが、憲法問題に絡むこともあり、人権機関はまだ誕生していない。