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2006.02.21
部会・研究会活動 <国際人権部会>
 
国際人権・女性合同部会・学習会報告
2005年10月28日
民衆劇から考えるインド社会
−参加型演劇を通した変革の実践

インド“農村の人々の教育と発展のための協会”および
“農村女性の解放のための教育協会”

  インド、タミールナドゥ州の"農村の人々の教育と発展のための協会"(APRED)と"農村女性の解放のための教育協会"(ARWEL)から5人のメンバーがアジアボランティアセンター(AVC)の招きで来阪し、研究所の国際人権部会で民衆劇を紹介した。

  古くから存在するインドの民衆劇は、歴史の流れの中でさまざまな役割を果たしてきた。とりわけ、独立運動が盛んな時代には、人々を動員する手段として活用され、運動の広がりの一翼を担った。タミールナドゥ州では、古くからダリットの芸術活動が盛んであった。

  独自の歌や踊りで日々の苦労や感情を表現したり、収穫を喜び合った。その一つにダリット特有の太鼓がある(牛の皮でできていて、牛を崇めるヒンドゥー教のもと、他のカーストは使わないし、それを使うダリットを穢れているとみる)。

  1980年代、豊かな芸術の素地をもつタミールナドゥ州で、APREDは民衆劇の手法を人々の意識化や組織化に使いはじめた。そこには、かつてダリットが育てた音楽や踊りも取り入れられた。村々を廻り、人々が日常抱えている問題について劇を通して気づいてもらう。あるいは、ロールプレイで地主と小作などになってもらい、問題解決の糸口を実感してもらう。笑いあり涙あり、人々の喜怒哀楽を織り混ぜながら劇を演じる。5人のメンバーによりそれが披露された。その一部を紹介する。

  「石」大きな石が道端にころがっている。通行人が何度も石につまずく。一人で動かすには重すぎる。やがて人々は力を合わせれば石を動かせることに気づく。

  「金」お腹を空かせた人が路上で物乞いをしている。誰も見向きもしない。やがて彼は倒れて死ぬ。一人のクリスチャンが通りかかり、横たわる男を覗き込む。"死んでいる。でもこの人はクリスチャンではない、"そう言い残して去っていく。次ぎにモスレムが通りかかる。彼も"この人はモスレムではない、"と言って去る。次ぎにヒンドゥー教徒が来る。同じくヒンドゥー教徒ではないと言って去っていく。

  その後、路上清掃人が来る。横たわる人を発見し、大丈夫かと体を揺り動かす。すると体の下に大金があるのが見つかる。驚いて「誰かこの人の知り合いはいませんか?」と叫ぶ。さっきの3人が来て、「私の家族だ」と言い張る。しかし清掃人は誰にもお金を渡さない。かわりに観衆に向かって遺体の埋葬の手伝いを求める。皆な出てきて遺体を運ぶ。異宗教間の調和と協力がメッセージである。

  「女性差別」一人のダリット男性が理由もなく警察につかまえられる。食べ物も与えられないまま何日も収監される。

  妻が食物をもって面会にきた。一部屋に案内され、夫の目の前で警察官にレイプされる。夫と妻は抱きあって泣く。夫は警察官に抗議をする。警察官は妻の目の前で夫を殴り殺してしまう。警察では、ダリット女性は人権も正義も否定される。

(文責:小森 恵)