〈第1報告〉
2006年8月3日、4日に、バンコクで「インクルーシブな都市社会のための都市地域会議」という会議が開催された。これは、地域都市連合の発足会としての位置づけである。ユネスコは、ダーバン会議の結果を踏まえて、反人種主義・差別撤廃の方策を探ったが、この取り組みはその一環である。都市は、様々な人が集まり、共生する場である。そこで、都市に注目した。世界的には、欧州、アジア・太平洋、アフリカ、アラブ世界、北米、南米に分かれている。各地域にはリードシティがあるが、アジア・太平洋地域の場合はバンコクがつとめている。
都市連合の組織は、とても緩やかな連合体である。ただ、反人種主義・差別撤廃という一つの目標としている点に意義がある。最終的には世界的な連合体に持っていきたいというのがユネスコの意向だ。
各連合は、反人種主義のためのワークショップの開催や、研究・出版を行うこととなっている。リードシティは、ユネスコ本部や現地事務所と連絡調整を行うが、欧州では、地域総会、運営委員会が行われる運びとなっている。さらに、取り組みの支援のために資源センターが設けられている。
参加都市は、10のコミットメントに合意することとなっている。まず「関心表明」を行い、その後コミットメント文書に署名すると言うことになっている。このコミットメントはすべて履行することは必要とされず、可能なものからという位置づけである。ここで挙げられる事業例はあくまで事例であり、独自の施策がある場合はそれでもよいとされている。
ユネスコは当初20都市のエントリーを予定していたが、結局当日集まったのは14都市であった。その中で、署名にこぎ着けたのは5都市である。そのほか、NGOや国内人権機関、省庁代表も会議には出席し、コミットメント内容について議論を行った。
会議の議論に合間には、各都市の状況について情報交換が行った。その趣旨は、よい事例に倣い、相乗効果をねらうというものである。ニュージーランドでのユダヤ人墓地焼き討ちの事例や、フィジーのインド出身労働者の子孫の課題などが示された。バンコクからは、ミャンマー移民に対する暴力の事例などが紹介された。堺市からは、行政と民間企業とが共同して人権擁護に向かう組織体としての人権教育推進協議会の取り組みを紹介した。
今回合意されたコミットメントとは、あるべき状況を示したものではなく、そこにたどり着くための手法である。そこを上手く活用しつつ、都市の特性としてのプラスの部分と、マイナスの部分とを理解しながら、人権課題に立ち向かうことが必要であろう。また、アジア特有の人種主義の存在や、急速な発展に伴う未登録の外国人労働者の課題など、進行形の課題について交通整理しないと、強固な人種主義が残りかねない。現時点から、様々なネットワークを醸成しながら取り組みを進める必要があろう。