調査研究

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2004.05.31
部会・研究会活動 <マスコミ部会>
 
マスコミ部会・学習会報告
2004年4月2日
(1)『人権年鑑2003』(部落解放・人権研究所編)について

(報告)中川健一(共同通信社)

(2)晋州五広大保存会の来日と仮面劇『白丁』公演実施受け入れについて

(報告)友永健三(部落解放・人権研究所所長)

(第一報告)

(1)マスメディア全体をめぐる動き

 メディア側は報道による人権侵害問題に対して第三者委員機関を設置して対応している。マスコミによる過熱取材(メディアスクラム)問題については日本新聞協会が対策委員会を設置し、過熱取材を自粛する動きも目立った。人権擁護法案(廃案)をめぐる情勢についても国会での議論の不十分さと独立性・実効性を備えたものでなくてはならない。

(2)部落問題

 2002年3月の「地対財特法」の期限切れを迎えて、法切れ後の同和・人権行政を熱心に見つめ直す記事も見られた。しかし、特別措置法終了をそれほど取り上げなかった新聞もある。一般施策に移行したことは部落差別の解消を意味しないので今後も抜本的な同和行政に向けた取材・報道をしてほしい。

(3)社会から排除された人々

 長引く不況やリストラを背景にした自殺者、ホームレスの増加に伴って「社会から排除された人々」をめぐる問題がある。2002年成立の「ホームレス自立支援特措法」はその意味で注目に値する。

(4)障害者差別

 NPO「障害者インターナショナル」などが法定雇用率の遵守を強く企業に要請している。大阪の池田小事件をきっかけに精神障害者に対しての偏見、排除の感情が強まった。また、ハンセン病回復者(元患者)隔離政策への熊本地裁違憲判決後もハンセン病元患者への人権侵害はなくなっていない。隔離政策の過ちの検証や偏見、差別をなくす努力をするべきだ。

(5)公権力による人権侵害

 法務省管轄下の名古屋刑務所での刑務官らによる暴行事件など人権を確立する立場にある公務員による人権侵害が相次いだ。出入国管理局による難民申請への受け入れ水準も低く、現場での人権意識の徹底が急がれる。

(6)「人権教育のための国連10年」に向けて

 「10年」の国連行動計画の中で、マスメディアは人権問題に大きな影響力を持ち、人権教育に果たすべき役割は非常に重要だと指摘されているが、マスメディア自身の主体的な取り組みは進んでいるとは言えない。そこで、新聞協会や民放連、マスコミ倫理懇談会などを中心に「10年」の推進体制作りを急がなければならない。人権研修の強化や雇用の平化をすすめ、何より人権をめぐる報道を日常的で積極的なものにする必要がある。新聞メディアは、教育との関係も深いのでソフトの面で人権教育に積極的に貢献すべきだ。市民と力を合わせ、マスメディアを「人権の拡声器」にしていきたい。


(第二報告)

 2003年4月の韓国人権ツアーでの晋州五広大保存会の創作仮面劇「白丁」との出会いとその後の交流の経過報告があり、今回の受け入れ実現について説明があった。

 演目の「白丁」とは、韓国の被差別民「白丁」を題材にしたものである。「白丁」は、1923年4月に衡平社を設立し差別撤廃運動を展開したことでも知られており、そうした点で水平社運動や部落解放運動ともつながりがある。

 今回の受け入れは住吉と和泉の地元の協力と理解がなければ実現しなかった。仮面劇「白丁」を通して衡平運動への理解を少しでも深めて欲しい。研究所の国際交流事業としても大変重要で今後も民衆、研究者レベルでの交流を継続していきたい。

(文責・事務局)