調査研究

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2006.01.04
部会・研究会活動 <マスコミ部会>
 
マスコミ・啓発・人権部会・合同部会 学習会報告
2005年11月30日
1「世界人権宣言57周年記念大阪集会―『職業と世系に基づく差別』の撤廃をめざして」ブリーフィング

友永 健三(部落解放・人権研究所所長)

2 総選挙報道とメディアの課題

鈴木 哲夫(朝日ニュースター報道部)

 2005年9月11日に実施された第44回総選挙では、自民党が単独過半数を大きく上回る296議席を獲得し、公明党との連立政権で衆議院の3分の2を超える勢力となった。

 今回の総選挙では、自民党は「郵政改革」1本で選挙を戦い、郵政法案反対候補に対しては対立候補を送り込んだ。メディアは、「小泉劇場」、対立女性候補を「刺客」「くの一」とよんで視聴者の興味をかきたてた。総選挙においてメディアはどのような役割を果たしてきたのか。有権者に対して多様な視点を伝えてきたのか、という問題意識で部会は、鈴木哲夫氏(朝日ニュースター報道制作部長、「特命チーム"情報戦"工作の全貌」執筆、月刊『現代』、2005年11月号所収)をお招きした。鈴木氏は今回の総選挙をきっかけに自民党内で立ち上げられた「コミュニケーション戦略チーム」を取材し、ジャーナリズムの観点から問題提起を行っている。

 自民党の「コミュニケーション戦略チーム」は、広告代理店が提供する詳細な選挙データに基づいて戦略的な広報・宣伝活動を行った。基本的活動は、危機管理を徹底し各メディアのモニター、有権者からの苦情に迅速に処理するというものであった。その一環として、郵政反対議員のもとに送り込まれた女性候補の「本籍も移しました」「嫁ぐつもりでやってきました」というセリフ、持ち物、しぐさ、髪型までを"指導"したという。鈴木氏によるとメディアは、この自民党の広報戦略にやすやすと乗ってしまったという。

 鈴木氏は、今回の選挙で権力を監視し、市民に多様な観点を伝えるというジャーナリズム本来の役割がなおざりにされたのではないか、メディアがより選挙報道に切り込み、権力をウオッチする機能を改めて回復する必要があると語った。

 報告を受けた議論の中で、今後予想される憲法改正の動向などを考えると、メディアの報道機能が弱体化しているのは非常に危機的な状況であるという意見が出された。また、言うまでもなくテレビは映像メディアであるが、今回の選挙報道でも「小泉劇場」と言われる中で、小泉首相の映像がニュースやワイドショーであふれかえった。これは、他党の扱いと比較すると明らかに「好意的」な映像だと考えられる。メディアがその社会的な影響力の大きさを自覚し、とりわけ映像ジャーナリズムにおける公平・公正さをどのように確保するのか、今後の課題である。

※尚、当日は報告1として「世界人権宣言57周年記念大阪集会―『職業と世系に基づく差別』の撤廃をめざして」(報告者:友永健三)が行われたが、これについては12/9集会内容の報告に譲る。

(文責:西村寿子)