調査研究

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2006.11.16
部会・研究会活動 <大学部会>
 
国際人権大学院大学大阪府民会議事務局・大学部会・学習会報告
2006年09月14日
アジア太平洋地域の大学における人権教育・研究の動向

阿久澤麻理子(兵庫県立大学環境人間学部)


 2006年8月24〜25日、タイのマヒドル大学で「アジア太平洋地域における大学レベルでの人権教育に関するワークショップ」が開催された。この会議は、世界的に人権のコース、プログラムの開設が進んでおり、人権センターを持つ大学も増加しているが、一方、人権の研究・教育は北米・ヨーロッパのモデル、枠組みに依拠していて、アジア太平洋地域の多様な状況をくみ取れていない。アジア・太平洋地域の大学レベルの人権研究・教育を議論する必要があるとのことで開催された。国際交流基金、スウェーデン開発援助庁が助成団体となった。

 アジア・太平洋地域の大学レベルの人権研究・教育は、<1>法学のみでなく、学際的な研究の場の増加、<2>大学院教育・研究の発展、<3>アジア・太平洋地域を対象とするインターナショナルコースの設置と進んできており、大きく大学院(ロースクールや学際的プログラム)と学部(法学部、教員養成大学・学部、一般教養)に分けられる。人権の取り入れ方としては、<1>Program(プログラム)、<2>individual courses(講座・科目)、<3>Module(講座・科目の一部)があるとして、以下、類型別に分けて各大学の報告が紹介された。

 法学系大学の事例として、香港大学法学部の人権コース、フィリピン・アテネオ・ロー・センター(アテネオ・デ・マニラ大学を基盤にする法に関わるNGO)、コロンボ大学法学部の人権コース、北京大学ロースクールが、学際的プログラムの事例として、カルカッタ大学、マヒドン大学(タイ)、カーティン工科大学(オーストラリア)が、教員養成の事例として、国立台湾師範大学が紹介された。

 現状の評価としては、少数を対象とした専門的研究には、人権という領域での共通理解が進み、現実社会の最も新しい、現実のニーズに対する政策提言が可能である反面、エリートの育成になりかねず、現実と遊離し研究成果が地元に還元されにくい面がある。リサーチ文化の浸透、欧米型ではない研究の蓄積、法だけでない視点からの人権の擁護と促進のための文化の問い直し、ニーズにこたえる魅力のあるプログラムの必要性など多くの課題が指摘された。

 (報告の詳細については、『ヒューマンライツ』に掲載される予定です。)

(文責:本多和明)