調査研究

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2008.01.28
部会・研究会活動 <大学部会>
 
国際人権大学院大学大阪府民会議事務局・大学部会・学習会報告
2007年10月29日

人権教育の確立と課題

スリプラパ・ペッミーシー(タイ、マヒドン大学大学院 人権・社会開発学部講師)

 国際交流会館と国際交流基金が主催して実施された、アジア・リーダーシップ・フェロー・プログラムで来日中のスリプラパ・ペッミーシーさんをお招きしてご報告していただいた。
 タイのマヒドン大学は、1943年に創設された国立大学で、修士課程、博士課程に人権プログラムをもち、博士課程「人権と平和研究」は、アジアで唯一の博士号を授与する「人権プログラム」となっている。

 修士課程の「人権プログラム」開設の取り組みは、当時学長、現在タイで国家人権委員会委員をしている人のイニシアティブで始まった。彼は医学博士で、平和・人権に関心があり、功績もあった。1997年までに2度、評議会に提出したが実現しなかった。

 私は1996年、マヒドン大学に入ったが、当時は関わっていない。人権プログラムに関わりたいと大学側に訴えたが、人権について特に理解があったわけではない。決意があれば実現すると信じていた。1998年8月、3度目は、私自身が評議会で説明した。評議会は承認するに当たり、3つの心配事を提示した。(1)人権研究を進めることは、政治と関わりなくやれるか。私は「人権が政治的になることは避けられない」と答えた。(2)アジア地域という文脈の中で進められるのか。「アジアの大学院でやっているところはないが、アジアにおける人権問題をコースの全体におくカリキュラムの構成になっている。学生自体がアジアからきて、自分たちの国、地域の中でおきている人権課題をもってくる。英語で授業をおこなう」と答えた。(3)費用対効果はどうか。「このプログラムが経済効果をもつとは思えないが、社会的効果はもつ」と答えた。承認されたことを知ったときは驚いた。

 1999年にプログラムが始まった。1期生をフルタイムで教えるのは私一人だけだった。2000年に2人になり、多くの友人が客員の講師として教鞭をとってくれた。
 1999年の学生は16人だった(半分はタイから、半分は国外から)。タイから0人の年もあり、英語でコースを提供しているのが理由と考えられ、大きな課題となった。

 3年にわたり、タイ語で講義を提供するプログラムを作る必要性を交渉し、1年半かけてプログラムを作成、来年度から実施する予定。修士は累積で95人が入学し(タイ人15人、残り18カ国から)、うち60人が修了している。就学期間は1年間で3年延長可能。論文を書く必要があるため、1年で終了する人はほとんどいない。
 2006年6月、博士課程のプログラム「人権と平和研究」を始めた。学生はタイ人が13人で、うち9人が修了した。
 その他に、年に2回の研修プログラム、シリーズの人権講座、6巻ものの出版活動をおこなっている。
 財源は、(1)授業料、(2)大学・学部からの支出、(3)外部基金である。大学から給料をもらっている教員はフルタイム7人(うち3人が外国人でオーストラリア、アメリカ、日本)、管理部門の職員は6人である。

 人権教育に取り組む原則と目的は、私が大学を卒業して、1979年頃のタイ・カンボジア難民キャンプでの体験が根本にある。エンパワーメントすること、傍観者となるのではなく、学習態度を変えること、行動する能力を養成することにある。学校当局とは、(1)アジア全域で初めてつくったことで、大学の評価を高めている、(2)私自身が大学へ要求をつきつけていない、(3)いろんな地域から招き入れているため、今のところうまくいっている。面接では、英語の修得が目的ではない、NGOで活動し、人権分野で経験のある人を選んでいる。

(文責:本多和明)