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「人権教育国際交流委員会」(略称HREネットワーク)は、8年前に大阪の人権教育関係者が中心になって結成したNGOで、日本とアメリカそしてアジア太平洋諸国の人権教育関係者間のネットワークづくりを目的にしている。
その活動の1つとして合衆国へのスタディー・ツアーがあるが、今年は4月22日から5月2日まで、10人がニューヨークとメリーランドを訪れた。ADL(Anti-Defamation League)訪問から始まった今回のツアーは、全体の印象として、「動く」アメリカを感じさせるものだった。
「動き」のひとつは、「住み分け」ということである。メリーランドの例で言うと、プリンスジョージ郡には移民が多く流入してくるほか、一定の収入を得るようになった白人以外のエスニック・グループがワシントンDCから移り住んで来る傾向にある。一方それに伴い、プリンスジョージ郡に住んでいる白人がその西側にあるモンゴメリー郡に移り住むケースが増加しつつある。プリンスジョージ郡では既に白人の人口は30%を割り込んでおり、人口から言うと白人は少数派であった。
「動き」のもう1つは、その様な課題への果敢な挑戦である。プリンスジョージ郡は多文化教育の先進地域であるが、中でもグレナーデン・ウッズ小学校は、多文化教育の最新のエッセンスが詰まっている学校であった。
600人の子どもたちのうち、56%はアフリカ系、残る44%はアジア系、白人、ヒスパニック、ネイティブアメリカンの子どもたちであり、カリキュラムの中心に複数の言語学習が位置づけられていた。言語学習を中心にしながら、学力向上にも重点をおいたこの学校のカリキュラムは、もっと日本にも紹介されてよいものだと思った。
また、高校改革の「動き」も随所で感じられた。例えば健常者の子どもと知的障害のある子どもたちで3〜4人のグループを作って学習する障害者教育や、日本における高校での「産業社会と人間」の内容によく似た「人間関係(ヒューマン・リレーションズ)」、日本より遙かに重視されているメディア教育などが印象に残った。
(N.T)