深刻化する高校生の就職問題について大阪の現状に焦点を当ててご報告いただき、その後参加者で意見交換をおこなった。以下、その要旨を紹介する。
高校生の進路状況はこの10年間で大きく変化してきた。大阪府の学校基本調査で府立高校(全日制)を例にとると大学(含:短大)進学率は94年度には33.7%であったものが、01年度には41.1%に増加し、就職率は22.2%(94年)から13.3%(01年)へと減少している。
大阪における新規高卒者の求人数の推移を見ると、93年6月に12万4千人であった求人数が01年度には1万6千人と一挙に8分の1に減っている。少子化の影響もありこの間、求職者も約3分の1に減ってはいるが、求人倍率は4.34から1.85へと激減している。高校生にとっては就職よりも(大学・短大、専門学校等への)進学の方がはるかに実現しやすい進路となりつつあるのが現状である。もちろん、家庭の経済状況が許せば、の話であるが。
高校生の進路状況を見ると今ひとつ重要な変化に気づく。それは、就職にも進学にも該当しない「その他」に分類される者が10.3%(94年)から15.8%(01年)へと増加している事実である。
正確な数字は把握できないが、この中のかなりの部分がいわゆる「無業者・フリーター」として労働市場に流出していると考えられ、若年者の生涯を通じてのキャリア形成に大きな弊害となる可能性も指摘されている。経済不況の深刻化及び産業構造の変化により、臨時的雇用の増加に比べ、高校生の就職が非常に厳しくなっていることも要因である。 今後、教育現場と連携した高卒「無業者・フリーター」の詳細な実態調査を進めることが急務であると言えるであろう。
このような厳しい情勢の中、大阪府では教育委員会・商工労働部・大阪労働局等の各部局が歩調を合わせて経済団体等への求人拡大要請行動をおこなうなど、高校生の就職支援の取り組みを強めているところである。新たな取り組みとして「未就職卒業者のための就職支援のシステム」が挙げられる。これは、高校在学中に本人の希望によりカード登録をおこない、就職を希望しながらも就職できずに卒業した生徒を、卒業後も引き続き、関係行政機関等から就職等の様々な情報を提供・支援していくためのシステムである。
一方で、昨年3月、国(文部科学省・厚生労働省)から「高卒者の職業生活の移行に関する研究最終報告」が出されている。この「最終報告」は、小学校段階からのキャリア教育の推進を提唱するなど、積極的な内容を一定含みながらも、(1)「一人一社制」等のこれまでの就職慣行の見直し、(2)夏休み中からの職場見学会・ジョブフェア(企業説明会)の積極的開催などを各都道府県において検討するように提言されている。公平な採用選考を実現する観点及び、高校生にとってよりよい進路選択ができるよう、慎重に議論する必要がある。
大阪府として、「統一応募用紙」で培ってきたこれまでの成果を踏まえ、それを後退させないよう、近畿各府県と連携して取り組みを進めていく必要がある。
上記の報告を受け、高校部会としては今後の課題を次のように考えている。
若年者の就労をめぐって「七・五・三」問題(中卒7割、高卒5割、大卒3割が3年以内に離転職する)と揶揄されるように、若年者の勤労観・職業観が産業界から問われて久しく経つ。残念ながら教育の現場からこの点に明確な解答が出されたとはまだ言えない。いわゆる職場体験学習が「総合的な学習の時間」等を活用し、とりわけ中学校現場で広く取り組みが開始されてはいる。しかしながら、キャリア教育について小・中・高の系統立てたカリキュラムが確立されたわけではない。出口指導に終始してきたこれまでの「進路指導」のあり方が問われているといってもよいだろう。
解放教育の立場からこれらについて明確な方向性を提起することがいま求められているのではないだろうか。