これまで解放会館の実践事例を中心に報告いただいてきたが、今回は博物館における実践ということで、撮影したビデオも交えながら大阪人権博物館(リバティおおさか)の事例について報告いただいた。
今年から国の啓発予算も増額され、人権教育が本格的に展開されるようになっている。大阪でも学習プログラムの作成などに関して、個別施設による単独の取り組みだけでなく、諸施設間の相互乗り入れ・ネットワーク化に対する問題意識をもって府内の社会教育施設が会議を重ねてきた。
今回は、大阪府の人権に関する学習プログラム研究開発事業などを背景に、文部省の親しむ博物館づくり事業への取り組みとして、ハンズ・オン(手で触れる)、参加体験型などを用いて大阪人権博物館が行った『皮とはきもの―げたばこをのぞいてみよう』の全体像を紹介する。(なお、これとは別に行っている社会教育プロジェクトでは、展示テーマに沿った個々の具体的なプログラムづくりについて、2001年3月には報告にまとめられる予定である。)
博物館の立地する浪速地区が皮革・履き物業に携わってきたことから、『皮とはきもの』をテーマに学校と博物館が連携する学習プログラムとし、学校の教員や地域の歴史・産業に詳しい地元の人たちとともに協議しながら進めていった。
この事業では、大阪市立栄小学校5年生の2クラス(それぞれ約30名程度)を対象として、ゲストティーチャー(渡辺実・吉村智博)の講義形式による『わたしたちのまわりのはきもの』と、近世に広く用いられていた『綱貫(つなぬき)沓(くつ)』という履き物を実際に作ってみる『綱貫をつくってみよう』の2部構成からなるワークショップを行った。
講義形式ではゲストティーチャーがブラックボックスに入った様々な民族的特徴のある靴(アイヌ民族の鮭皮で作った靴など)に触れさせて、形・材質などを想像させたあと実際に見せながら説明して、関心を引き出すという工夫がなされた。実物を見て触れたあと、気候や文化と靴、浪速地区や皮革の歴史についての説明がなされたため、感想や疑問もより具体的になっていった。
実践形式では、作業の早い遅いにかなりの個人差が出ることを予想して、あらかじめ裁断された皮が用意されていたが、ひもを通す穴をポンチであけたり、ひもを通したりする作業にかなり手間どっていた。
課題としては、講義形式・実践形式ともに45分の時間的制約のなかでは消化しきれないこと、実際に作業する場面で30人では十分に目が行き届かず、20人が適正規模であること等々があげられる。