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成人教育部会・学習会報告
2001年3月12日

識字・日本語パートナー、コーディネーター
養成講座と学習者について

(報告)岡田耕治(大阪府教育委員 会地教育振興課)

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 プログラムを実施する側ではなく、学習する側に注目して、個々のプログラムの実際の効果を測ることを目標に、具体的事例における学習者の意識変化・変容をテーマに設定した。

 大阪府の識字教育指導者養成事業プログラム研究開発事業の一環としてこの2〜3月にかけて行われた「識字・日本語コーディネーター(教室担当者)養成講座」と「識字・日本語パートナー(講師)入門講座」の、実施の概要、学習者に対するアンケート、そこに表れた学習者の意識等々について、大阪府教委地域教育振興課の岡田耕治さんに報告いただいた。

 「コーディネーター」養成講座では、午前・午後のプログラムに沿って、27人が、教室の運営について3/2・3/3の2日間集中的に、教室見学やグループワーク、発表を通じて学習するという形態をとった。

 それに対し、「パートナー」養成講座では、2/10〜3/3まで毎週土曜日の午後、講義やワークショップを交えた2時間半のプログラムに沿って、23人が、「どう教えるか」の指導法ではない「識字・日本語パートナー」としての構えを学習するという形をとった。

 これらの講座を通じて学習者の意識・考え方がどのように変化したか、を把握するためのアンケートを設計するにあたって、自由記述欄の他に、パトリシア・A・クラントンの『おとなの学びを拓く』(鳳書房、1999)から「自己決定型学習をめざす取り組みのプロセス」の図にもとづいて、「1.講座内容は関心や好奇心をよびおこしてくれた」「2.講座の進め方にとまどいや不安を感じなかった」「3.講師の講座の進め方に関心が向いた」「4.他の受講者の発言に考えさせられた」「5.自分の発言や活動が講座を進める上で役立った」「6.受講して、新たな興味や熱意が湧いてくるように感じた」「7.受講して得たことを具体的に自分の活動に活かそうと思った」という7つの質問項目を設定し、それに対する回答は「どちらともいえない」という選択肢のない4段階評価の形式とした。

 アンケートの分析をみるかぎり、両講座とも回数を重ねるにつれ、アンケート各項目に関するプラス回答が増えていく傾向を示しており、学習が明らかにプラスに作用していることが窺えるが、「パートナー」講座で、問いの3と7に関する回答はその傾向と一致していない。

 3に関しては、第1回目にワークショップが設定されていたため、展開を予測できないことに起因するとまどい・不安があったのではないかと想像できる。7に関しては、第3回目の講義で「ボランティアが指導の技術を身につける必要があるのかどうか」「学習者との関わりが特定の人に偏ることを心配すべきか、学習者との人間関係づくりを重視すべきか、一概に言えない」といった問題提起で講義が締めくくられたため、「具体的に自分の活動に活かそうと思」える内容を見出せなかったのではないか。

 講座に関わったメンバーからは、講座を通じて同じ担当者が関われたら一層よかった、「コーディネーター」講座では2日間集中して取り組んだのが効果的だった、講座のグループでメンバー同士のつながりをつくることで互いに抱えている問題が「教室の目的をどこにおくか」にほぼ収斂していることが明確になった、ワークショップが方法のすべてではないし、数回の講座で学習者が得るのは「新しい気づき」程度であり、変容にまで至らないのが一般的だろう、今回は課題整理で終わっているが、3年ほど蓄積すれば「コーディネーター」としてのスキルを身につける講座にできるのではないか、講座を継続すれば、学習者のその後も追跡できる、といった意見が出された。 (熊谷 愛)