調査研究

各種部会・研究会の活動内容や部落問題・人権問題に関する最新の調査データ、研究論文などを紹介します。

Home調査・研究部会・研究会活動成人教育 > 学習会報告
部会・研究会活動 <成人教育部会>
 
成人教育部会・学習会報告
2001年9月7日

学びと社会参加をつなぐコーディネーターをめざして
亀岡市『ワークショップで学ぶ人権セミナー』の事例から

(報告)田村紀子(地球市民教育センター・コーディネータープロジェクト代表)

------------------------------------------------------------------------

今回は、地球市民教育センター・コーディネータープロジェクト代表の田村紀子さんに、学習者が学習プログラムの“参加者"から“担い手"へと変化しつつある亀岡市の事例をもとに、学びと社旗参加をつなぐコーディネーターの役割について報告いただいた。

田村紀子さんは、地球市民教育センター在職中、行政からの講師派遣依頼を受け付ける窓口をしていた。「参加型なら何でも」「単発企画で」「テーマはお任せ」等々の注文を数多く受けるなかで疑問を抱き、系統立ててプログラムされた連続講座を提案するようになった経緯がまず語られ、99年度、亀岡市からの「人権教育の担い手養成をめざす8〜10回の講座」という明確なイメージをもった相談を出発点として始まった今講座の概要が紹介された。

以下、報告の概要を簡単に紹介する。

通常、行政が行うのは単年度事業であるが、1年目は「広がり」、2年目は「深まり」、3年目は「実践・行動」という目標をもち、3年にわたる企画案をコーディネーターとして提案した。コーディネーターに対しては予算がつかないことが多いが、亀岡市の場合は予算をつけてもらうことができた。

1年目の99年度は、亀岡市在住・在勤を対象に参加者を募ったところ申し込みが殺到し、募集30名に対し60名の応募があった。固定メンバーは約25名で、1年目の固定メンバーの6〜7割がリピーターとして2年目も継続して受講した。

1年目は1つでも関心のあるテーマを見つけてもらおうと、様々なテーマで参加型学習を設定した。2年目は講師や内容を少しずつ変えて深まりを期待し、参加者自らプログラムを企画、発表する場を最後に2回設けた。

2000年度終了時に、アンケートに寄せられた「企画への参加希望」に対する「参加したい」16%、「参加してもよい」63%という回答は、企画への参加の道筋をつくる根拠となり、最終的には11名(のち9名)が企画ミーティングに参加した。大半は教育に関わる人たちだが、企業の研修担当者、農業や地域の様々な活動に携わる人たちがメンバーになっている。

亀岡市について参加者各自が感じる課題を題材にプログラムを作ろうと、議論を重ねて8回連続のプログラムにまとめていった。企画担当・講師依頼担当・チラシ作成担当に分かれて講座具体化の作業に入り、亀岡市の行政担当者が情報共有・中継の拠点の役割を担うという連携も生まれた。広報の必要からもスタートをもう少し早めるべきだったという反省がある。

参加者との協働のなかで最も大切にしてきたのは対等な関係づくりと、メッセージとプロセスの一致。一人ひとりが大切にされる対等な関係を言いながら、上下関係で一方的にものを言うような矛盾に企画のプロセスが陥らないよう、自分の抑圧性を自覚しつつ一人ひとりの発言が尊重されるような雰囲気づくりをめざしている。

また、各人が自分の課題を出しあい、重ね合わせてみることで地域の問題が見えてくるのではないかと考え、企画メンバー自身が抱えている生活での課題を大切にした。

行政との協働に関わってまず気づいたのは、主催者である行政の担当者が「何のために、誰と、どんなふうに」をどれだけ明確に描くことができるか、今まで地域でどんな人間関係をつくってきたか、地域の問題がどれだけ見えているか、事業実施後の活動をどこまで見据えているか等によって、講座の内容が左右されるということだ。

社会教育主事や行政担当者の人たちがコーディネーターとして予算確保から講師依頼、講座運営まで、日常的に行っている様々な細かい仕事を自ら再評価することが重要であり、そのうえでコーディネーターたちが集まって、グチも含め安心してものが言いあえる関係をつくり、経験を共有、蓄積していければと思う。

地域の外から来たコーディネーターには、地域における参加者の活動を見届けることが難しいという第三者としての限界と同時に、利点もある。地域のしがらみがあって身近な人間には言えないことも、話してもらえたり、その地域を相対化して見ることで気づいたことをフィードバックしたりすることができる。

亀岡市の事例は、市民の社会参加への流れのうちのほんの第一歩であり、間口を広げてまずは講座のなかで各自のテーマを見つけてもらい、現場での実践の前に試行錯誤してもらう場だと考えている。

他の地域でも同じような試みが出てくるようになれば、亀岡市の実践が相対化され、コーディネーターとしての仕事・役割も客観的に評価されるようになるのではないかと期待している。 (熊谷 愛)