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成人教育部会・学習会報告
2001年10月26日

成人基礎教育私論〜私の必要だったもの

(報告)白井俊一(大阪市住吉人権文化センター)

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前回の部会(9/7)は、地球市民教育センター・コーディネータープロジェクト代表の田村紀子さんに、「学びと社会参加をつなぐコーディネーター」をめざす立場から、亀岡市「ワークショップで学ぶ人権セミナー」の事例についてご報告いただいたが、今回は参加型学習のファシリテーターとして実践をもとに、大阪市住吉人権文化センターの白井俊一さんから「社会参加のための成人基礎教育の内容と何か」に焦点をあてて報告いただいた。

 以下、ごく簡単にその内容をまとめてみた。

 私の問題解決型の人権学習プログラムではは、グループ討議という安心して語り合える場で身の周りの差別や矛盾に気づき、バーチャルリアリティーでの疑似体験によるトレーニングをしている。その本当の目的は、ワークショップの場を離れた家庭・職場・地域で、実生活における問題や矛盾を解決していける力をつけることにある。

 社会と関わり社会を変えていくには、まず身近な問題、目の前の矛盾を解決していくことから始めなければならない。そのためには、まず目の前の人と関わる力が必要である。話し合うことができなければ、もっといえば「観る→聞く→話す」ができなければ、問題解決はできない。

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 人と語るということ、そして社会に向かうということは、自分自身に向かうということでもある。そうして、私自身をふりかえると、ともすれば自分自身の殻に閉じこもろうとしてきたこと、人をいじめる側にも、自分が惨めな思いをするような立場にも身を置かないようにしてきたことに気づいた。多くの場合、加害者であり傍観者である自分に気づかされてきた。

 社会の矛盾を撃つためには自分自身の矛盾を撃たなければならない。そのことを通じて社会参加をする、ということを考える必要がある。

 成人基礎教育というのは、識字を典型とするような、学習を奪われた人たちのための教育だと思っていたが、私自身のことを考えてみると、文字の読み書きはできても人と関わってコミュニケーションする力を奪われてきた。「聞く・話す」は「読む・書く」の前にある。

 成人基礎教育とは、社会で生きていくための力をつける教育であり、そこで獲得されるべき基礎学力=「生きる力」とは、読み書きだけではなくコミュニケーション能力や人権感覚などを含み込んだ問題解決能力ではないかと考えている。 (熊谷愛)