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部会・研究会活動 <成人教育部会>
 
成人教育部会・学習会報告
2002年3月15日
豊中市泉丘公民分館のサークル活動にみる成人学習
―地域成人教育の創造にむけて

(報告)大橋保明
(大阪大学大学院人間科学研究科)

  前回の第7回部会(2/4)では、2002年度にまとめる「成人教育に関わるケーススタディ」の報告書について、成人教育および成人基礎教育、また参加型学習等に関する理論的整理と、具体的なケーススタディからなる報告書をめざす方向で議論がまとまった。

  今回は、地域を拠点に展開されている学習活動として、豊中市泉丘公民分館におけるサークル活動について、大阪大学大学院の大橋保明さんにビデオも交えながらご報告いただいた。以下、その概略を紹介する。

  小・中学校で公民館活動がおこなわれている例は、建物に公民館が組み込まれている富山県利賀小・中学校、ランチルームを利用している和歌山県山口小学校、余裕教室を利用している大阪府貝塚北小学校など、把握している範囲でもいくつかある。

  豊中市では豊中市立中央公民館条例制定の翌1949年、学校と社会教育を結びつけるという発想はなかったが、桜井谷分館が学校内に設置され、現在では余裕教室の利用を基本として、全41小学校に公民分館が設置されている。

  泉丘公民分館も1975年、小学校の余裕教室に設置されたが、新興住宅地である泉丘では人口増にともなって余裕教室の減少という物理的な問題が生じ、地域の問題について住民がともに学習し、まちづくりに取り組んでいくための拠点として本年に泉丘小学校の敷地内に泉丘コミュニティルームが建てられ、公民分館もそこに移動した。豊中のコミュニティプラザと異って専従職員がいないので、逆に住民による自主運営が可能になる利点もある。

  分館の活動としては、体育祭、文化祭、社会見学、連続講座のほか広報活動があり、ワッショイ文化祭は約3800世帯、約1万人の住民の約三分の一にあたる3000人規模の参加でおこなわれ、スポーツフェスティバルは社会教育による学校五日制の支援という意味をもっている。そうした取り組みの中心を担っているボランティアサークルは、81名のメンバーで1997年に誕生した。以来、参加メンバーは増え、2001年は137名になった。

  ボランティアサークルの中心メンバーはPTAの役員とも重なっている場合が多かったため、授業参観やPTA活動時の保育活動を始めて以降、ボランティアサークル内で子どもと関わる取り組みが増えていく。また分館室時代から平日の1〜4時には5〜6人のメンバーが常駐している状態で、日常的に子どもや教師と顔を合わせてきたことが、ボランティアサークルと学校・教師・子どもとの間のつながりをつくることにもつながった。現在では、ボランティアサークル活動に関わっている教師もいる。

  これまでに、中学生も参画しての泉丘バリアフリーマップ制作と全戸配布のほか、日常的に水曜日の午後に開かれるサロンにおける小学生との工作や料理教室や、授業参観日の保育、小・中学校の公開授業・体験学習(例えば竹を使っての工作、おうすを楽しむ、手話でコミュニケーション等)での子どもに対する支援などをおこなってきた。

  引きこもりがちだった女性がボランティアサークルに関わりだして、現在、メンバーとして継続的に活動している例や、中学生になった子どもが工作教室で小学生に教えるかたちで関わっている例などがある。また本年には校区の成人式も多くの参加を得て開催している。

  講座形式の場合には、教室の中で完結してしまいやすく社会参加につながりにくい面があるが、このボランティアサークル活動は、現実に子どもたちと関わることを通じて、おとな自身も学び充実感を得ることのできる継続的、自主的活動といえる。社会教育の蓄積のある地域は活気がある。しかしボランティアやコーディネーターがなぜ活動をし、そこで何を発見し学んでいるのかを具体的にもっと明らかにしていく必要が確認された。

(熊谷愛)