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部会・研究会活動 <成人教育部会>
 
成人教育部会・学習会報告
2002年5月31日
大阪市の女性学級について

(報告) 柴田 昌美(大阪市男女共同参画課)

前回の成人教育部会(4/26)では花立都世司さん(ともにあゆむ釜ヶ崎識字教室もじろうかい)から、地域課題とまちづくり全体の計画から学習活動へとつなぐ釜ヶ崎での実践が報告された。今回は、各地域に根ざしたテーマで自主的学習活動に取り組む大阪市の女性学級を支援する立場から、大阪市男女共同参画課の柴田昌美さんに報告いただいた。以下、その概略を紹介する。

 大阪市の女性学級は、1950年代中頃に文部省が各地で着手した実験社会学級の一環で、文部省委嘱事業として始まった婦人学級事業がその原型である。大阪市では1957年、生野区婦人会と市教委の共催で初の婦人学級が開催され、同年度中には「合理的な家庭生活」「社会道徳」「環境衛生」「政治意識」等をテーマに、市教委委託25学級、文部省委託1学級の婦人学級が実施されて以降、拡充されつつ毎年実施されている(初の婦人学級研究集会は1958年に開催。1993年から女性学級に改称)。

 2002年現在、大阪市の女性学級は、<1>地域における日常生活から学習課題を見つけ出し、学習の当事者自身が企画・運営するかたちで、小学校区ごとの単位女性会で展開される234の「地域女性学級」(大阪市地域女性団体協議会への委託事業)、<2>区女性会と区役所市民活動推進係の連携によって女性の学習リーダー養成をめざす12の「区女性学級」(国補事業)、<3>大阪市地域女性団体協議会の自主事業として、女性会のリーダ養成の位置づけで国補女性学級と隔年で開催される12の「市女性会区学級」が実施されている。

 年間スケジュールは、5月上旬に区・地域女性学級開設説明会と運営委員研修会の実施、5月下旬に実質的には学習相談になる地域女性学級面接を経て、6月〜翌年2月に各女性学級を実施し、3月下旬に女性学級研究大会(事例発表と分科会討議)の開催、といった具合に進んでいく。

 女性学級(とくに地域女性学級)には、<1>生活のなかから課題を見つける生活密着性、<2>地域の女性が自分たち自身で工夫して企画・実施する当事者性、<3>コミュニケーション重視、<4>実践的テーマへのニーズが比較的高いという地域活動への反映性、といった特色があり、たとえば福祉や国際交流、ごみ問題などをテーマに、話し合いの深まりからまちづくりへと、学習と実践の循環につながっていく大きな可能性をもっている。

 2001年度のプログラムでは、地球環境の現状の講義に始まり、ごみ減量の講義と舞洲のごみ処理施設見学、そして淀川河川敷での身近な自然の再発見から、環境とからだにやさしい食品選びの講義に至り、話し合い・学習発表で終わった、大きな環境と身近な環境、自分から環境へと出ていくものと環境から自分へと入ってくるものの両方の視点をもち、かつ実践的なプログラム展開をした事例や、前半で大阪にゆかりのある歴史上の女性についての講義を行い、それを受け継ぐ形で後半では今日的課題であるドメスティックバイオレンスや男女共同参画社会基本法について学んだ事例など、注目すべき取り組みが見られた。

 男女共同参画社会の形成にむけた取り組みにおいて、その先導的な理念の啓発に加えて、生活に結びついた学習テーマの中で生活実感と関連づけてそのあり方を考え広めていくうえで、一見伝統的な社会教育の手法を受け継いでいる女性学級は、大きな役割を発揮しうると思われる。

(熊谷 愛)