---------------------------------------------------------------------------
日本では、主として社会教育施設で行われる教育という意味での社会教育の概念はあっても、主に年齢を基準として考えられる成人教育という概念が社会的に共有されているとはいいがたい。
今後、成人を対象として学校教育・社会教育にまたがって行われる教育が重要になる、と準備会では考え、社会教育施設などで成人を対象とする教育が実際にどのように行われているか、現状に学ぶことから始めようと、第1回目は公民館の講座事業について、富田林市立公民館のケースを報告いただいた。
富田林は大阪市のベッドタウンという地理的条件もあり、仕事をもつ人が平日の夜の講座に参加するのは難しいため、昼間地域にいて地域活動などにも関わっている地域とのつながりの強い女性を対象に、女性学の講座などを企画してきた。
そこから、女性問題と高齢化社会問題とを結びつけた講座を構想し、「高齢社会をよくする女性の会」の協力を得て、96年秋に女性学講座「やがて あなたも おばあちゃん」(全10回)を開催した。この講座の場合、「高齢社会をよくする女性の会」のメンバーにコーディネーターを依頼し、毎回の講師の人選についても一任した。ただしその前提として、全10回の講座の意図・内容(柱)については公民館の担当者の側から提示し、打ち合わせを重ねている。対象・人数・期間を示すのは最低限必要不可欠である。最近では、電話一本で依頼して当日まで何の打ち合わせもなし、というのは当公民館でもさすがになくなっている。
この講座からは、地域の高齢者福祉を勉強し、行政にも働きかけていこうという有志による自主活動グループが誕生し、その後も講師を招いて学習活動を行っているという意味で、当公民館では数少ないケースである。これには、講座の間に「高齢社会をよくする女性の会」からの働きかけあったことが大きかった。また、グループ内での対立などがあるとグループとしての存続が難しくなるので、自主グループがうまくいくかどうかは中心となる人が鍵を握っているといえる。
もう一つ特徴的な事例として、子どもへの暴力防止プログラム「CAP」プロジェクトの全面的な協力に、教育委員会の協力も得て、96年から市内の学校を会場として大人対象にCAPプログラムの「出前講座」を始めた。97年からは府の補助対象事業にも指定され、16校園で大人のみならず子ども対象のワークショップも開始し、99年度は公立幼稚園の年長組を回ることも思案中である。
学校への「出前講座」はまだ少ないが、学校側の壁もトップが変わればなくなっていくし、人員や会場などを学校側に一任できるので、ある意味では楽だともいえる。解放会館には「同和地区のために」という位置づけと、外部から来てもらう=交流という目的もあるので、外に出ていくのが難しい面もあるが、青少年会館には学校などに出かけていってはどうかと奨めている。