調査研究

各種部会・研究会の活動内容や部落問題・人権問題に関する最新の調査データ、研究論文などを紹介します。

Home調査・研究部会・研究会活動成人教育 > 学習会報告
2003.10.15
部会・研究会活動 <成人教育部会>
 
成人教育部会・学習会報告
2003年8月11日
男のちょっと寄り道講座
〜生涯学習施設における立地を活かした行政・NPOの連携事例の観点から

(報告)田中聡(大阪市立総合生涯学習センター)・中村彰(メンズセンター)

  今回は行政とNPOによる連携による施設の立地条件も活かした取り組み事例として、大阪市立総合生涯学習センターの田中聡さんとメンズセンターの中村彰さんにそれぞれの立場からご紹介いただいた。以下、その内容について、ごく簡単にまとめてみた。

(第一報告)

  田中さんの報告は、地域に根ざす学習機会として小学校で実施されている生涯学習ルーム、大阪市内の各ターミナルに整備されている市民学習センター等の中核として設置され、<1>情報提供と学習相談、<2>企画開発とネットワーク、<3>人材養成・研修、<4>市民の交流・活動支援、<5>シティカレッジ事業、の五つの機能をもつ大阪市立総合生涯学習センターに関する説明から始まった。

  本講座は、文科省の委嘱事業として2000年度から始まった人権感覚育成モデル事業の一環で、市民団体とともに企画する試み。当センターのオープニング時の公募に対して応募してこられた142団体の一つがメンズセンターだった。

  メンズセンターの中村さんと企画段階から打ち合わせをする過程で、大阪駅前第2ビルという立地、男女共同参画センターではなく生涯学習センターという間口の広さを活かし、ジェンダーに馴染みの薄い50代ぐらいのビジネスマン層を対象に、生き方を振り返ってもらえるような講座ができないかと、親の介護・葬式を入り口に自分の問題に引きつけて仕事・家庭・地域について考えてもらう、という講座の流れを設定した。

  対象を男性にするうえでは、新聞を通じた広報が非常に効果的だった。立地のよさや生涯学習センターという間口の広さ、チラシなど広報を通じてアピールした気楽に参加できそうな雰囲気などから、男性対象としては多い69名の応募があった。内訳は大阪市内26名、大阪府内24名、他府県19名で、神戸からの参加者の間でグループ活動の芽も見られたが、京都新聞、神戸新聞、奈良新聞でも告知したこと、神戸・京都からも便利な梅田という立地の効果があったのではないか。50代対象という設定が、実際には60〜64歳中心、退職者が多かったが仕事帰りの人の参加もあった。

  メンズセンターとの提携と分担という面での成果としては、我々が市の各施設への幅広い広報、メンズセンターが会員などへの実質的な参加働きかけ、プログラム面では、我々が学習プログラムづくりの一般的ノウハウ、メンズセンターでは講師陣との質的なつながり、運営面では、受付や会場案内、備品類や部屋の確保、資料の準備を含めた事務局機能は体制のある我々の側がもち、メンズセンターは講師とスタッフを兼任してグループ討論などでの推進役を担う、といった点が挙げられる。

  課題として、立地を活かしたといいつつ駅前第2ビル周辺で働く人にはなかなか届かなかったことが挙げられる。連続講座の形態も参加を難しくしているとすれば、単発講座をビルの地下の喫茶店でするとか、特養や斎場の職員の話を伺うのなら、実際に現場に行くといったことも考えられる。

(第二報告)

  中村さんの報告は、本講座と関わる経緯から始まった。田中さんから働きかけを受けたとき、男女共同参画センターであるクレオ大阪中央と共催で「男のフェスティバル」を準備中だった。分科会もあるとはいえかなり大規模な催しであり、深まりという面で生涯学習センターでの本講座のような取り組みの必要性も感じていた。

  仕事や日常生活で悩みを抱えつつジェンダーの考え方にはアレルギーをもつ男性たちに届くよう、有名講師の講演ではなく、フェスティバルを共につくってきた講師たちによる1時間弱の体験談をもとにして、参加者の率直な語り合いから気づきを促す方法をとった。講師陣にも内容・構成、広報も含めた企画から関わってもらい、弁天町市民学習センターからの継続受講者たちも話しやすい雰囲気づくりを担ってくれた。

(熊谷愛)